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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-81

『…………

「なんだよ、エリ」
 1年ぶりに、幼なじみを玄関に迎えたダイスケは、しかし、不満そのものといった表情だった。しかし、彼が置かれている状況を考えれば、その表情も理解できることであるし、エリカ自身もここに来るまでの道程の中で想像していたことであった。
「あ、あの、あの………」
 それを見越して、道すがら用意してきた言葉は、しかし、いざ本人を前にすると全てが吹き飛んでいた。
「…………」
 そして、俯いて黙ってしまう。これは、困ったときにする彼女の癖だ。
「あの……」
「…………」
 ずいぶん見慣れていたつもりだったが、ダイスケは久しぶりにそんなエリカを見た思いがする。考えてみれば、同じ幼稚園・小学校・中学校・高等学校に通っていながら、年を経るに従って随分と疎遠になっていたものだ。
「いいのか? いま俺に関わると、内申に響くぞ」
 ダイスケは、相手を入院させるほどの怪我を喧嘩で負わせ、無期の停学処分となっている。そのことを、クラスが違えどエリカが知らないはずはない。
「なんで、来たんだよ」
それを承知で、自分の家にやってきたエリカの真意を、ダイスケは計りかねていた。
「お前、推薦、狙ってるんだろう?」
「………」
「だったら、まずいって。帰れよ、な?」
「………」
 最後の部分に対し、エリカは即座に首を振った。妙なところで頑ななのも、エリカの性分だとダイスケは知っているから、天を仰いでため息をつく。
「……あがるか?」
 完全に、根負けしたダイスケであった。…………』



安納郷市の短編集『恋心』の表題作。ふたみは、今までの濃密な安納小説とは違う展開に、別の意味で新鮮さを覚えていた。
気がついたときから身近にいた二人が、淡い恋心に翻弄されつつも、互いの気持ちを確かめ合っていく純愛物語だ。
それが、結実の時を迎えるくだりに、ふたみは早くもさしかかっている。



『………

「ほんとに、やめちゃったんだね………」
ダイスケの部屋は、随分と変わったとエリカは思う。好きな野球選手のポスターを所狭しと貼ってあったが、それらは全て取り払われ、ベッドと机が目立つ無味乾燥な空間となっていた。
それは、怪我によって野球を断念せざるをえなかったダイスケの無念さの表れなのだ、と、エリカは思う。
ベッドの上に腰掛けているダイスケは、ポスターを剥がした後も痛々しい壁に寄りかかり、エリカにも座るように促した。
「肩が、イカれたんじゃな」
そう言って、右腕をぐるりと廻す。
「いてっ……」
途中でびくりとし、そのまま動きを止めたのは、痺れるような痛みが右肩に走ったからだ。
「ははっ、ざまねぇな……」
高校二年のときは、プロも注目する有望な投手と言われていたのも、肩を壊してからは、既に過去の話だ。
手術によって、日常生活に支障が出ないまでに回復はしたが、完治までは時間がかかると医者には言われている。実際、滲むような痛みが走ることもあり、そのためになかなか寝付けない時もある。
「左ばっかり使ってたらよ、結構な力ついててさ、おかげで一発KOの病院送り」
自嘲気味に、笑って見せる。喧嘩のことを言っているのだ。その寂しげな目に、エリカは、ダイスケの中にある苦しさを見つけていた。


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