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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-79

『間もなく、電車が……』
 アナウンスの後で、そんなふたみを置き去りに、電車はレールを滑っていく。思わずふたみが動き始めた列車の方を見たとき、ある人物の影が目に入った。
(あ……)
 その心配そうな顔を、ふたみは忘れられなかった。
そして、助けられた礼も言えず、名前も聞けなかったことを、冷静になったとき後悔した――――。



 その駅で、脱糞で汚してしまったショーツを脱ぎ捨たので、そこからは下着を履かないいわゆるノーパンと呼ばれる状態で家まで帰らなければならなかった。
幸いにも、周囲にバレてしまうことなく帰宅できたのだが、自分でもわかるその異常な状態に、我知らず興奮してしまったらしく、帰り着くなりふたみは熱くなった自分の体を慰めた。
排泄を我慢しながら、途中で漏らしてしまったという恥辱的な事態も拍車をかけ、その日の自慰行為は激しさを極めた。いろんな瞬間を妄想の中で膨らませ、そして性の高みへ駆け上る。それも、何度も。
自慰を始めた最初こそは、今まで読んでいた小説の性的な描写であったり、兄と慕う隣人・勇太郎の影であったりしたが、電車の中で起こったことを妄想の中に投影させた時、まったく別の影が現れた。以後の自慰は、その影になぶられている自分を想い、性感帯を責めていたのだ。
 そして、もう逢えることもないと思っていたその影が、いま、目の前にいた。
「あ、ああ、あの………」
 予期せぬ再会に、ふたみは一層しどろもどろになる。
「轟です。よろしゅう」
 そんなふたみに、兵太はにこりと笑って軽く頭を下げた。その口元に見える八重歯も、ふたみはしっかり覚えていた。
 間違いなく、電車の中で痴漢から助けてくれた人物だ。
「あの、あのあの………」
何もいえないまま、ふたみの頬が熱くなる。
「あ〜あ、ふたみちゃん、まただ」
男子と話すときは、いつもこんな具合だったから、美野里も、苦笑しながら肩をすくめていた。
「すまないな。この子は、男子を前にするとこうなる」
 智子が、フォローを入れておいた。
「奥ゆかしくて、可愛い子でんな」
 兵太の口調に、ふたみは少し違和感を感じた。まるで、初めて会ったかのようなその口調。
「はじめまして、ふたみはん」
(あっ)
 ひょっとして、覚えていない――――。一瞬、何ともいえない寂しさが胸に沸いたとき、兵太の思わせぶりなウィンクに気づいた。
「ワイ、ふたみはんの苦手な男ですけど、これから、よろしゅうしてください」
 そういって、また八重歯を光らせる兵太。
そんな兵太の仕草に、思わずふたみの口元も緩む。
「うん、私も、よろしく……」
「「?」」
 初対面の男子生徒を前にしながら、いつもとは違うふたみの所作に、智子も美野里も顔を見合わせて目を点にしていた。



「すまないな、轟君。今日は活動日ではなかったから、みなが集まらなくて」
 いま、文芸部の部室には、智子と美野里とふたみしかいない。といっても、これで既に過半数は超えてしまっているのだが。
「かまいませんよ。急な話をふったんは、ワイのほうやさかい」
「ときに、轟君。君は、目標にしている文章家というのはいるかい?」
 智子は、早速、自分の得意分野での会話を始めた。これも、この新入部員の特徴をつかむ大事なことである、と智子は認識している。


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