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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-75

「なんかね、新しい人が入るから、時間があるなら部室に顔を出してほしいんだって」
「そうなの?」
「とも先輩に聞いた話だと、2年生のひとだって」
 そういうと同時に、美野里の顔がふにゃけた。
「しかも、男の人だって!」
「え……」
 ふたみは少し、身構えてしまう。男子に対しては、ひどく人見知りをしてしまうからだ。
「どんな人かなー。本に興味ある人だから、きっと、インテリっぽくて、スマートなひとでぇ……」
美野里はふたみの逡巡にも気づかず、空想の輪を広げている。今現在、文芸部には男子がいないから、少しはしゃいでいるのだろう。そこは、年頃の娘である。
「ね、ね、いこ、いこ」
 そして、ふたみの手を引いて駆け足気味に走り出した。もともと元気で押しの強い少女だ。それとは正反対のふたみは、すぐにペースに引き込まれ、何かを考える暇もないぐらいに、部室まで引っ張られた。
「ふたみちゃん、連れてきましたー!!」
 文化系の部室が並ぶ東棟の、中央あたりにある教室には「文芸部」のプレート。美野里は、ふたみの手を引いたままそのドアを開けた。
「お、来たか」
 部室には二人しかいなかった。
 長机をはさみ、艶やかな長髪と涼しげな目元が印象的な女子生徒と、丸眼鏡をはめた男子生徒が座っている。
「とも先輩」
 女子生徒は、文芸部の部長を務める藤堂智子。学業・運動・容姿すべてにおいてトップクラスの才媛だ。それゆえに、男女共に人気が高い。
もっとも、男子にとってはあまりに敷居が高そうに見えるため、露骨に言い寄る輩は皆無で、その代わりといってはなんだが、彼女の周りには女生徒がよく輪を作っている。
彼女の中性的な物腰も、手伝っているのだろう。そして、例に漏れずふたみも、智子には憧れを抱いている。もっともそれは、純粋に先輩に対する憧れであり、百合色のそれではない。
「彼が、入部希望の轟兵太くんだ」
「よろしゅう」
 入り口で固まっていた二人に、紹介された兵太は軽く頭を下げる。
「あ、安原美野里です。みんなには、みのちゃんて呼ばれてます」
「へえ、可愛いでんな。ワイも、そう呼んでいいでっか?」
「もちろんですぅ!」
 可愛いといわれた時点で、すでに美野里は陥落していた。
「あと、彼女が安堂双海。なかなか力作を書く、うちの戦力だ」
 口を開かないふたみにかわって、智子が彼女を紹介した。ふたみの異性に対する過剰なまでの警戒心を、慮ってのことだ。
「安堂……はん、でっか?」
 怪訝そうに見られ、ふたみは、俯いてしまった。慌てて兵太がフォローを入れる。
「あ、ああ、すんません。ウチのクラスにも、同じ名字がおったもんで……」
「それは、彼女の姉君だろう」
「? あれ、もうひとりいはったんでっか?」
「?」
 智子と轟の話がかみ合わない。それもそのはず。智子は、ふたみからわずかに聞かされていた安堂勇太郎の存在を、この時点では忘れていた。
「ああ、思い出した」
 だから、記憶を探るのに少し時間がかかってしまったのだ。
「一学期の末に、ひとり男子の転校生がいたはずだった。確か、彼も、安堂だった」
「ワイは、そっちの安堂はんを知っとるんですわ」
 ふたみが、ふいに顔をあげた。勇太郎の知り合いというポイントに、関心が寄ったからだ。そこで、初めてその男子生徒の容姿を確認することができた。
(あ!?)
 その顔には、確かに見覚えがあった。と、いうより、忘れるはずのない影が、そこにあった―――。


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