『Twins&Lovers』-56
「くっ!」
びゅく、びゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ!!!
「うあぁぁぁ――――っっ!!」
込み上げてくるものに堪えることさえできず、サオリの中に全てを放っていた。
びゅびゅ、びゅびゅ、と、とめどなく駆けていく精子の群たち。
サオリの襞に包まれながら果たされたその解放は、夢精や自慰では得られないほどの、めくるめく快楽を与えてくれた。
「あつい……あついよ……ヒロちゃん……ヒロちゃん……」
胎内で弾けるその熱を、その全てを貪ろうと収束する襞。
まだ、頂点を得られていないが、サオリはヒロヨシが出したものの熱さに、かるい眩暈を覚えた。
「あ……まだ、出て……」
若さゆえに限界まで溜められ、そして吐き出された欲望が、結合部分から白い泡となって溢れてくる。
(おれ――)
初めて、女の中で果てた――――。それも、恋しく思っていた女性の中で……。
「ヒロちゃん……」
手を伸ばしてきたその指を、掴む。想いが、もっと、繋がった場所から届くように、強く。
「ねえちゃん……」
と、呼ぶと、唇を強く噛まれた。
「もう、そんなの、イヤ……」
それが意味するところは、ただひとつ。
「なまえで、呼んで……おねがい……」
言葉の中でも、女として自分を見て欲しい。そう、サオリは言うのだ。
「サ……」
ほんの少しの、逡巡。しかし、
「……好きだ……サオリ………」
待ち望んでいたヒロヨシの言葉に、サオリの顔は輝いた。――――――………』
こんこん………。
その音に、勇太郎は現実に戻った。
「久美ちゃんかね?」
郷吉が、ノックされたドアに向かって言う。いきなり、さっきセクハラを働いた看護師の名前を呼ぶ辺り、この人も懲りない。
ドアが沈黙した。勇太郎は、はたと気づく。すぐに、駆け寄り、ドアを開く。
「こ、こんにちは」
そこには、花束を抱えたひとみがいた。
たちまち、郷吉の顔がきらめく。
「おぉう! めんこい娘じゃのう!!」
面と向かって言われると、なにやら恥ずかしい。快活なひとみも、すっかり郷吉のペースにはまってしまったようだ。
「……は、初めまして。勇太郎くんのクラスメイトで、安堂ひとみと言います」
そう言って、ふかぶかと頭を下げる。いつもよりしおらしいのは、今朝方の弥生の言葉を、多少なりと意識しているのかもしれない。
「アンドーとな? ワシと同じじゃ!」
「はい……その…字も同じなんです」
「ほう! <堂>の字を書く安堂か! これは、奇しき縁じゃ! のう、ひとみちゃん!」
初対面なのに、いきなりファーストネームで呼ぶのか、このじいさんは! 勇太郎の内心の毒づきは、少し、嫉妬の情が入っている。
ちら、とひとみが勇太郎に視線を送ってきた。勇太郎は、それが何を意味するのか理解して、頷く。ひとみも、頷き返して言葉をつなげた。
「家も隣同士で……その……勇太郎くんとは、お付き合いをさせてもらってます」
「なんじゃと!!」
郷吉の驚愕の表情。見回りの看護師が、斉木久美嬢と違ったときのそれよりも豪快な驚きだった。
きっ、と勇太郎をにらむ郷吉。ちょいちょい、と手招きする郷吉。嫌な予感を感じながらも、祖父のパワーに負けて、近寄る。
「勇太郎!」
やおら、その首をつかまれ、締め上げられた。