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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-57

「ぐわっ!!!」
「この、この! 隅におけんやつめ!! ワシが入院し取る間に、とっくにチェリーは卒業しておったか!! しかも、こんなめんこい娘を手篭めにしおって!! くぬ、くぬ! 成敗じゃ、成敗!!」
 ひとみに、聞えないよう小声で、脇に抱えた勇太郎の耳を襲う郷吉の嘯き。
(こ、これまでか……)
落ちることさえ覚悟した勇太郎の首が、ふ、と解放された。
見あげると、優しい祖父の顔。そして、手のひらが、頭に置かれた。撫でられるようにして。
「ひとみちゃん……だったのう?」
「は、はい」
「こいつは、まあ、何の取り柄もないヤツではあるが、ワシの自慢の孫じゃ。これからも、仲良くしてやっておくれ」
 そう言って、笑うのだ。ひとみは、顔を真っ赤にして、なぜか少し瞳を潤ませて、
「はい!」
と、大きな返事をした。
「結構! 元気のいい子は、気持ちがいいのう! おまえにゃ、もったいないわ!」
 再び締められる首。しかし勇太郎は、落ちかけの意識の中、祖父がはしゃいでいるのだと気づいて、嬉しかった。自分に、大事な人が出来たことを、喜んでくれているのだ。



「そうか、そうか。不思議な縁もあるものじゃ」
 郷吉は、終始、にこやかにひとみと喋っている。こんなに、心から嬉しそうな祖父は久しぶりだ。
「遡れば、きっと同じ一族だったのじゃろうて」
 話は、安堂の姓から始まり、今は安堂家の起こりとその歴史について郷吉が講義をしている。源平の頃は、とか、南北朝の時代には、など、何処まで本当なのかわからない話が、延々と続いた。
 ひとみは、その話にじっと聞き入り、時には相槌を打って郷吉を喜ばせた。ひとみは古典は苦手だが、歴史は好きなのである。なにしろJHKの歴河ドラマを、録画してまで見ているぐらいなのだから。
「勇太郎、わしゃ、決めたぞ!」
 不意に、話を振られて勇太郎は焦った。が、委細構わず、郷吉は言い放つ。
「ふたりとも、いますぐに、結婚せい!」
「え、えぇ!?」
 勇太郎と、ひとみの声がハモる。
「それでな、はよう子供をこさえて、その可愛い赤子をワシに抱かせてくれい! ひとみちゃんの子ならば、きっとめんこい娘が産まれるじゃろうて……」
 独り合点に、恍惚に浸る郷吉。きっと、頭の中には、ビジョンが猛烈な速さで展開しているに違いない。しかも、自分たちの子供は娘だと、その設定まで決まっているらしい。
「ま、待ってよ、じいさん」
 勇太郎の声をさえぎるように、き、と睨みつける。
「なんじゃ、勇太郎! ひとみちゃんと、将来は一緒になるつもりじゃろう?」
「それは、まあ」
 無意識の言葉だった。本当に、無意識の。だがそれは、ひとみには大きな意味を持つ言葉だ。
 言ってから気づいたのか、勇太郎は顔が熱くなった。間接的なプロポーズじゃないか、これは。
 ひとみも、顔を真っ赤にして伏せている。これは、完全に意味を理解している姿だ。
 そんな二人を見て、にや、と郷吉が笑む。
(は、謀ったな、じじい!)
「かかかかかか!! まあ、焦らんでも良い。とりあえず、勇太郎がその気なのはわかった。これで生きる楽しみが増えたぞい!!」
 今日のじいさまは、手がつけられない――――。まさに、嵐のようだ。いや、嵐そのものだ。


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