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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-53

「う……」
 そんな従姉の顔に、ヒロヨシは見惚れた。
 ……ふいに、ヒロヨシは、サオリの顔が寄ってくる気がした。徐々に、間近に迫るその瞳。
 いつしか、その目は閉じられて。
そして、唇に柔らかい感触が生まれた。
(っ!?)
 サオリの唇が、自分のそれに合わさっているのだ。その行為の意味を知らぬほど、ヒロヨシはウブではない。
 憧れの人が、自分から、こんなこと――――。
 サオリは、なおも強く唇を押し付けてくる。その勢いをとめられず、あとずさった彼の後頭部に、何処かの家の塀が直撃した。
(痛ぇ――――)
 後頭部に鈍い痛み、唇に柔らかい温かみ。
 頂点を極める狼狽の中、その二つの感覚が、やけにはっきりとしたものを、ヒロヨシに与えていた。――――……』



「思えばそれが、わしにとっては初めてのチュウよ……」
 頼む。その顔で、しかも恍惚とした表情で“チュウ”とは言わないでくれ。勇太郎は、声なき呟きを郷吉に放つ。
「なんじゃ、チュウの話で勃ってしもたか?」
「なんだよ、それ!」
「ぬぬぬ、甘いぞ勇太郎! 恋い慕う者へのスキンシップは、たとえ指先同士だけでも甘い劣情を催すものなのじゃ!」
「………」
 それは、身をもって知っています。やはり、声なく呟く勇太郎。
「心をつなげて、身体を重ねる愛の行為こそが、全ての快楽の頂点にあるものなのじゃ!」
「………」
 それも、身をもって知っています。
「ワシがその、憧れの君と初めて契ったのは、夏と秋の間にある三日月の美しい夜じゃった……」
 郷吉の話は、なおも続く。
そしてそれは、勇太郎の中では『憧憬』の内容に転換されていた。



『………

 ヒロヨシには、まだ、実感というものが無い。しかし、事実はそこにある。
 もう、手の届かない人として、遠くから憧れるだけだった従姉。そんな従姉の、一糸纏わぬ美しい肢体を、まさかこの目にできる日が来るとは…。
「ヒロちゃん」
 愛しい者を呼び、その手を広げるサオリ。天女の如き声に誘われるまま、ヒロヨシは、まずはその唇を塞いだ。
とても、とても柔らかくて、甘い。
「ン………ンン……」
 口の端から漏れるサオリの吐息。それだけで、気持ちが昂ぶる。
 サオリは、ヒロヨシの頭に手を廻す。そして、短く刈りあがったその頭を、いとおしげに撫でさすった。
(うわ……)
 たったそれだけなのに、肌が泡立つほどに心地よい。昔、小さかった頃、機嫌を損ねた自分を優しくあやすためにしてくれたコトが、今では、恋人への情愛を強く知らせる行為となっていた。
 感じるのだ。サオリの手のひらから、あふれんばかりの愛情を。
「ン……ヒロ、ちゃん……」
唇を離しても、光の糸が二人の間を離さない。サオリの熱にうなされたような瞳に、吸い込まれそうだ。
「さわって……いいんだよ……」
サオリは、呆然としているヒロヨシの手を取ると、胸に押し当てた。
柔らかくも張りのある感触が、ヒロヨシの手のひらに張り付く。男友達が言っていたものとは、まったく違う感覚。自転車を高速で乗り回し手のひらいっぱいに風を受けても、こんなにも質量のある柔らかさは生まれてこない。


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