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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-42

(それにしても―――)
すごい音だった。きっと、昼寝のときにお腹を冷やしてしまったのだろう。
(ふたみちゃん、だいじょうぶかな?)
 耳聡くなった己の聴覚が、ドアを閉じる音を捉えた。ふたみが手洗いから出てきたのだろう。
 勇太郎は身構える。ふたみが居間に来ても、自然に振舞わなければ。彼女もよく気がつくコだから、気をつけないと……。
 しかし、いつまでたってもふたみはやってこない。気になった勇太郎は、そっと廊下をのぞいてみた。
「あっ!」
 そこには、明らかに様子のおかしいふたみの姿が。
「ふたみちゃん、どうした!?」
さきほどまでの思考は全て吹き飛んで、勇太郎はふたみに駆け寄る。
 支えたふたみがつく粗い息遣いは、とても熱いものだった。




「夏風邪だね」
 勇太郎は、この家が懇意にしているという杉本内科診療所の電話番号を知っていたので、すぐに電話をした。すると、その診療医の杉本はすぐに往診に来てくれた。
「症状も軽そうだ。水分をしっかりとって、汗をかいて、着替えをちゃんとすればすぐに治る」
「そうですかぁ」
 勇太郎はほっとする。
「ご飯は、食べられそうかい?」
 弱々しく頷くふたみ。
「それじゃ大丈夫だ。しっかり休むんだよ」
 杉本は、立ち上がった。
「あ、そうだ。彼氏君」
「はい?」
 それって、僕のことですよね? どちらのですか――――と、杉本に言いかけたがやめた。無言のまま先生を階下まで送る。
玄関先まで共に来ると、杉本は鞄を探り始めた。
「熱が、どうしても下がらないようだったら、これを処方してあげなさい」
 そういって、カプセルにしてはやけに大きいサイズの薬を、勇太郎に渡す。
「これは?」
「座薬式の解熱剤だ。本当は、注射をした方が早いんだが、ふたみちゃんは針アレルギーでね……飲み薬では即効性も薄いから」
「ハ、ハァ……」
「相手は、女の子だ。処方を勧めるときは慎重にね」
「ワ、ワカリマシタ」
 思わず声が上ずった。
「それじゃ、なにかあったらまた電話するといい。近いからね、飛んでくるよ」
「ハイ、アリガトウゴザイマス」
 勇太郎は、手の中にある座薬に、すっかり思考を握られてしまっていた。



 アイスノンをふたみの額に巻き、勇太郎はおかゆの準備をする。祖父に教えてもらった即席雑炊は、塩と卵とご飯で出来るのだ。味は薄いが、それ故に彼女も食べやすいだろう
「さ、ふたみちゃん。食べられるかい?」
「ありがとう、お兄ちゃん……」
 ふたみは上半身を持ち上げる。膝の上に盆を載せ、はふはふとおかゆを口に運んでいった。
 さすがに、全部は食べられなかったらしく、残ったものは勇太郎が平らげた。お互い、それが何を意味するのか、それに気づく余裕はないらしい。
 ルルルルル、と電話が鳴った。時間を見ると7時。おそらく、ひとみか弥生からの電話に違いない。
「あ、そうだ」
 ふたみが熱を出したことを伝えないと……。そう思って、立ち上がった勇太郎の袖を、ふたみが掴んだ。
「………ひとみちゃんと……おばあちゃんには、言わないで」
「え?」
「ふたりとも、楽しみにしてた旅行だから……」
 そういうわけにはいかないだろう。
「でも……」
「お願い、お兄ちゃん。私、大丈夫だから……」
 ふたみにそんな顔で言われると、弱い。勇太郎は、その髪を撫でてあげた。


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