『Twins&Lovers』-41
ブリブリブリブリブリブリ……
(あ、ああ……止まらない……)
ミヨの羞恥をあおるように、激しい音がなおも響く。
「ミ……ミヨ……」
しかし、コウジもまた、思いがけないミヨの脱糞劇に狼狽していた。
所定の時間を過ぎれば、トイレに連れて行くつもりだった。それなのに、ミヨは自分でゴミ箱に跨って、それに向かって排泄している――――。
その倒錯した、日常ではありえない光景が、コウジの中で、とてつもなく淫靡なものに映った。
(妹の脱糞、妹の脱糞、妹の脱糞。しかも、ゴミ箱の上で―――――)
「うう……こんなのひどい………こんなのひどいよ……」
便意はあらかた落ち着いたが、羞恥に耐え切れず、ゴミ箱に跨ったまま泣き出すミヨ。そんな汚辱と恥辱に震える妹の姿に、コウジは初めて女というものを意識した。………』
そして、変態的な快楽に目覚めたコウジは、ミヨに次々と汚辱的な行為を強いるようになる。そして、いつしかミヨもその悦楽に夢中になり、堕ちていく――――。それが、この『きょうだい』だ。<安納郷市>の中でも、珍しく陵辱色の強い作品である。
それだけに、ふたみも読み出してから止まらなくなってしまい、つい夜更かしをしてしまったのだ。
「ん……」
目が醒めたとき、ふたみは激しい腹部の痛みに気づいた。
(あ、や……やだ……)
慌ててベッドから身を起こすと、トイレに駆け込む。水洗とはいえ、便器は和式だ。素早くその上に跨り、スカートをたくしあげ、ショーツを下ろすと、腰もおろした。
「んんっ!」
その瞬間、下腹に力が入り、激しい下痢便を叩きつける。水溶質の高いそれは、ふたみの中から飛び出るときに、随分と派手な音を鳴らした。
(ふぅ……)
タオルケットの甲斐もなく、お腹を冷やしてしまったようだ。溢れ出る水溶便を、二度、三度と便器に吐き出しながら、ふたみは思う。
ふと、狂おしい便意から開放されたふたみは、居間からテレビの音が聞えてくるのに気がついた。
「あっ!」
(お兄ちゃんがいるんだった―――――)
ふたみの頬に、血がどんどんと駆け上がっていく。
きっと、自分の音を聞かれた――――。こんなに、こんなに汚らしく大きな音――――。そう思うと、ふたみの気が遠くなりかける。あの小説の主人公のように。
とにかく、ふたみは汚物でよごれた尻を拭い、水を流して外にでた。
「あっ」
外に出た瞬間、なんだか、自分の目線が高い気がした。そして、体中が熱い。なんとなく、意識がぼやけてくる。
膝から力が抜けた。壁に寄りかかるが、力が入らない。
(お兄ちゃん……)
ふたみは、自由の利かない身体を何とか支えながら、恥ずかしさを忘れ、勇太郎に救いを求めていた。
勇太郎がJHKの野球中継を見ていると、二階からたたたたと言う音がしたので、
(ふたみちゃん、起きたのかな)
と、彼女を呼ぼうと居間を離れたときだった。
廊下の先の扉が乱暴に閉められたかと思うと、勇太郎の耳に、
ブチャッ! ビチャビチャビチャビチャ―――――――。
という、派手な破裂音が入ってきたのだ。
(あ………)
勇太郎にだって、そんな経験はある。そして、廊下の先にある扉のプレートには“お手洗い”の文字。
そう。彼は聞いてしまったのだ。花も恥らう乙女の、腹を下したその音を。
すぐに、居間に戻り、チャンネルをBGMが派手なものに変える。そして、何でもないようなふりでテレビに集中した。ふたみが居間に来たとき、そんな勇太郎の姿を見れば、きっと音を聞かれたかも、などという懸念は消えるに違いない。