『Twins&Lovers』-38
『……
ミヨが、高熱を出した。
コウジはすぐに、養父の相談相手だったという内科医のスギムラを呼んだ。
そのあまりにも切迫した話し方にあわててやってきたスギムラは、ミヨの診断をするや、安堵したようにため息をついて、
「夏風邪じゃ」
と、コウジに告げた。
「きっちり栄養と水分を取って、2,3日も安静にしていればよくなる」
「でも、ミヨのやつ、何も食べないし、飲まないんだ! 無理やり食べさせても、すぐに、もどしちゃうんだよ!」
なおも食いかかるコウジ。
「今年の夏は、特に暑かったからのう。それで、胃が弱っとるのかもしれん。……柔らかいヤツでも、ダメなんか?」
スギムラの問いに、コウジは頷く。
「本当なら、点滴をうってやりたいのじゃが……ミヨちゃんは、針アレルギーでな。注射はダメなんじゃ」
そういって、唸るスギムラ。
「あとは、あれしかないが……ミヨちゃんは女の子じゃしな。あまり、薦められる方法ではないのう。……コウジ、一応、その方法は教えておくぞ」
そう言って、一旦診療所に戻ると、懇々と説明をしながら、持って来た器具一式をコウジに渡した。
「いくら大事な妹じゃからといって、相手が、年頃の女の子じゃというの、忘れんように」
スギムラは念を押す。
しかし、渡された器具を手にしたコウジは、これでミヨが楽になるのだ、という情念に取り付かれ、最後のほうのスギムラの言葉は耳に入らなかった。
「コウちゃん……」
いつも、元気で快活な妹の弱々しい声。コウジは胸が痛む。
もっと、妹の寝相に気をつけてやれば、身体を冷やすこともなかったのに……と悔いる。
「ミヨ、どうだ?」
「うん……平気だよ。……でも……パジャマが、汗で、気持ち悪いよ……」
ミヨは、熱とは別のものにうかされた瞳をコウジに向けていた。
「そうか、じゃ、拭いてやる」
そういうと、コウジはぬるめのお湯とミヨの着替えを用意してきた。そして、ミヨの上半身を起こす。
「自分で脱げるか?」
ミヨは首を振る。
「じゃ、脱がすからな」
そう言ってコウジは、まず、パジャマの上着に手をかけた。
何のためらいもなくボタンを外すその仕草は、あくまで兄としての行動なのだとわかるから辛い。
(ミヨの心臓、こんなにドキドキしてるんだよ……)
コウジに心で語りかける。
我ながら立派に育ったふたつの果物が、コウジに晒されている。しかし、コウジはあくまで興味がないように、裸にした妹の身体を丁寧に拭いているのだ。
(やっぱり、コウちゃんにとって、あたしは妹なんだ……)
こんなに思い慕っても、肝心のコウジに届かない。それが、とても哀しい。
そうこうするうちに、上半身の汗は全て拭われた。
「あ、そうだ」
下半身の体拭きにかかろうとしたコウジが聞いてくる。
「スギムラ先生に、ミヨが楽になれる方法を聞いたんだ。ミヨ、いま、メシ食えそうか?」
ミヨは首を振った。いま、胃に何かが入ると、結果が目に見えるぐらい胸が気持ち悪い。
「そっか……じゃ、ミヨ。すぐに浣腸してやるからな」
「!?」
兄の口からさらりと出た言葉に、ミヨは驚愕した。
(か、カンチョウって……それって……)
動揺して混乱するミヨの前で、コウジが取り出したものは、ビニールチューブの真ん中に風船のような膨らみのある器具だった。エネマシリンジというヤツだ。もっとも、そんな名前をミヨは知らなかったが。
「さて、と」
コウジは、呆然としているミヨを横たわらせるとうつ伏せにする。そのまま、腰を抱えるとそれを持ち上げ、尻を自分のほうに向ける。