『Twins&Lovers』-3
膣に収まっていた指は滑るように抜き取れたが、不浄の穴はその咥え方があまりに激しい。なかば無理やりに引き抜くと、ぼっ、という破裂音が響いた。まごうことなき、うら若き乙女の放屁である。
みるみるミナトの顔が紅くなる。人前で放屁するなど、乙女として最も恥ずべき行為だ。ましてや、自分の愛する男の前ではしたなくも大きな音を立てて……。
ミナトは、死ぬほど恥ずかしかった。
「ああ、お嬢さん。なんて、なんて、甘美な音なんだ!」
しかしトオルは、放屁して恥入るミナトを解することなく、その尻を両手で支えると、なんの躊躇いもなく、その花壷に己が肉剣を突き刺した!
「んあぁぁぁぁぁぁ!!」
ぐじゅぅぅぅ!!
濡れた淫肉が重なり合う音は、ふたりに至上の快楽を生み出す。
一心不乱に腰を突き上げるトオル。その突き上げに、同じく腰を振って応えるミナト。それは、けっして野生の獣には真似が出来ない動きだ。明らかに、生殖以外の意図をもってなされる行為だ。
びちゃ、びちゃと、はじけ飛ぶ淫らな雫は、やがて白濁した泡をも生み出す。
「くっ、くっ、ふぅっ!」
トオルの、荒々しい息づかい。
「あっ、ふあっ、ひゃあっ、あはぁっ!」
ミナトの、艶かしい鳴き声。
人とも、獣とも思えぬ喘ぎの中で、確かに二人は目指す場所へ共に昇華している。
「お嬢さん……、お、おじょう…さん!」
「いやぁ……なまえを……なまえをよんでぇ!」
「み、ミナト・・・ミナトぉ!」
トオルはもう、情欲の臨界点に届いている。それは、ミナトも同様だ。
「ミナト……このまま……」
トオルが、腰から来る痺れを肉剣の先端に感じ取った。
「ええ、ええ……! ちょ、頂戴ぃ! はしたない私の中に、あなたの熱いの……ちょうだい!!」
ミナトは、先ほどの痴態をも、昇華の材料にした。
ほどなく、トオルが果てる。
「あ、あくっ!」
びゅっ、びゅっ、と肉剣の先端から容積を持った液体をミナトの中に注ぎこんだ。
「―――――――――っ!!」
そして、愛する男の子種の激流を子宮に直接叩きつけられたとき、ミナトもまた、情欲の頂へ己が身を惜しげもなく躍らせていた。…………』
ばたん、と扉が開いた。そこには、ひとみがいた。
勇太郎は、小説中の男女が、その性の迸りを終えた余韻に浸っていたため、咄嗟の行動が出来なかった。つまり、官能小説を手にした状態のまま、ひとみと対峙することになった。
「ゆ、勇太郎くん……」
ひとみは聡明である。全ての状況を、勇太郎が手にした小説のカバーの色から察知した。
「そ、それ……」
ひとみの眼が揺らぐ。体も揺らぐ。その顔は、赤みを帯びた途端に、青ざめていった。
「あっ、ひ、ひとみさん!」
ふわりと、膝を崩したひとみを、勇太郎は慌てて抱きとめた。全ての元凶となった『暗夜奇行』は勇太郎の手から離れ、しかし、そんな二人をあざ笑うかのように、表紙の艶やかな挿絵を表にして床に落ちた。
ひとみの祖母は、今日は週に一度の検診日で帰宅は遅くなる。ふたみもその付き添いで、やはり遅くなる。勇太郎は、そんなことを帰り道にひとみから聞いていた。
(まいったよなぁ)
ベッドに横たわるひとみを見ながら、勇太郎は頭を抱えた。つまり、いまここには勇太郎とひとみしかいない。時間は4時にもなっていない。ふたみたちは、夕食は外で済ませるとも言っていたので、帰りは相当遅いだろう。
(ひとりにしておくのも……)
いやだ、と勇太郎は考える。ともかく、早いうちにひとみに謝りたかった。許してもらえるとは思っていないが、事がこじれるまえに謝っておきたかった。