『Twins&Lovers』-26
昨夜は結局朝帰りだったこともあり、今日の密会は無理だろうなとひとみは思う。別に、制限があるわけではないが、やはり弥生やふたみに気兼ねしてしまう。
(ふぅ……)
できないとわかると、無性に欲しくなるのは人間の動物としての業だ。特定の発情期を持たないかわりに、それはスイッチを入れれば、いつでも、どこでも、簡単に熱を帯びてしまう。
(節操ないよね、わかってるんだけど……)
ひとみは、昨夜の情交を思い出し、体を熱くした。
ベッドの下を覗き込み、小さな段ボールを取り出す。例の一件以来、ひとみはこの中に愛読書を収納している。
手にしたものは、勇太郎から借りた<安納郷市>著作の官能短編集『昼下がり』(税込み550円)。最近は、これがお気に入りで、何度となく読んでいる。その中でも、ひとみが特に気に入ったのは、短編『学園』である。
『………
リョータの戸惑いは、最高潮だ。
それこそ、生まれる前から隣に住んでいた幼なじみのナツキが、その顔を赤らめてリョータの股間に佇んでいるのだから。
「ナ、ナツ…」
リョータは、掠れた声で、ずっと前から呼んできた少女の名を呼ぶ。
そのナツキは、リョータのズボンの上から、彼の分身をいとおしげに撫でさすっている。
「く…」
初めて、母親以外の女性に性器を触られた快感が、リョータの身体を走った。
「リョーちゃん……見ても……いい? ……見ちゃう、ね……」
リョータの返事を聞く前にナツキは、ズボンのチャックを、じじ、と下ろす。そして、中で屹立し、リョータのトランクスを持ち上げている棒状の獲物を、さらに外気に触れさせた。
「わ、すごい」
顕わにされたリョータの肉剣は、若さに溢れ、その存在を強く誇示しようと天に向かって反りあがっていた。
「ナツ……」
リョータは、ナツキの髪を撫でる。
身だしなみにほとんど無頓着な彼女は、髪型も、無造作に短く切りそろえているだけだ。しかし、本当はその髪質はとても艶やかで、伸ばすとかわいいだろうな、と常日頃思っているリョータである。
「ん……」
髪を撫でられ、ナツキは咽喉で声をあげる。
そして、その瞳は潤み、眼前にある未知の器官を凝視していた。………』
幼なじみの二人が、性への興味を募らせて、お互いの性器を見せ合うところから始まる短編である。
そこにでてくる、優しい少年と、勝気な少女―――。ひとみは、この主人公たちに自分の姿を見ていた。
『……
「わ、わ、ナツ」
リョータの性器に、ナツキの手が添えられた。
ひんやりしていて気持ちがいい―――いや、そうではなく。
見るだけだったはずだ。それが、ナツキが、自分の肉棒を、さもいとおしげに撫でているではないか。
調子に乗って、髪を撫でたのがいけなかったのだろうか? リョータは幼なじみの大胆な所作に、困惑する。
「すごい……固いし……熱いし……なんだか、ネバネバして……」
リョータは頬が熱くなった。その粘り気は、ナツキに触れられたことで、鈴口から溢れてしまったものだ。
夢精も自慰も既に知っているリョータは、性的に興奮すると、まず、モノの先から透明な液体が出てくるらしいことを、身をもって学習していた。