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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-22

(どうしよう)
 夏場だったこともあり、パック詰めにして冷凍されていたカレーをレンジに入れてから、ふたみは、洗濯機の前に来ていた。
失禁に濡れたショーツとシーツはきれいに洗われて、乾燥機の中で廻っている。残された問題は、敷布団のことだ。
 あのままにしておけば、間違いなく匂いが残るし、そもそも今日の寝る場所に困る。
 結論から言えば、ひとみか弥生に言うしかないのだが、はっきりいって恥ずかしい。そして、その恥ずかしいことで怒られたくない。
(どうしよう)
 時計を見る。ひとみたちが帰ってくるのは、だいたい7時前後だ。
 あと、思いつくのは勇太郎。しかし、自分の尿失禁の後始末を、同年代の男子に頼むことなどできはしない。
……普通はそう考えるだろう。
 だが、なぜか、ふたみは、真剣に勇太郎に相談しようかと思った。
 なぜだろう、なぜだろう。
 ピーピーとなるレンジの音。それさえも気づかず、ふたみは勇太郎のことを思う。
「あ、ふたみちゃん」
「!」
 ふたみは、我に帰った。夢想の中にいた勇太郎が、現実を纏いながらそこにいた。
「お兄ちゃん……」
「どうしたの? あ、洗濯してたんだね」
「………」
「カレー、あったまったみたいだからさ。レンジが、<早く出せー、早く出せー>って、ピーピー言ってる」
 おどけた感じで勇太郎が言う。
「あ、ご、ごめんね」
「や、いいんだよ。その……早く、食べよっか」
 勇太郎は感じていた。なんとなく、ふたみの様子がおかしい事を。しかしそれを問い質す理由も見出せないまま、ふたみと並ぶようにして洗い場を出た。




 ひとみのカレーは、極上の味だった。レンジで暖めたので、風味が若干飛んでいたかもしれないが、食欲を十分すぎるほど満足させてくれた。
 もくもくとカレーを口に運ぶ二人。会話らしい会話はない。
「………」
 勇太郎は、話題を探した。なるべく、ふたみが乗ってこられる話題をだ。
 そのとき、勇太郎は気づいた。ふたみのことを、自分は良く知らないなと。
 考えてみれば、出会ってからまだ二ヵ月。ひとみとの急速な仲の進展がぼかしてしまったが、人が知り合って、お互いを理解するにはまだ日が浅い。
 ふと、ピピッピピッという電子音が鳴った。何度も聞いたレンジのそれではない。どうやら、洗い場のほうから聞こえてくるようだ。
(あ、乾燥機か……)
 さっき、ふたみが洗濯機の前にいたことを思い出す。どうやら、その乾燥が完了したようだ。
「ふたみちゃんは、洗濯当番なのかい?」
 取りあえず、身近なところで話題を振ってみる。なんか、上司の娘の機嫌をとるサラリーマンみたいだな、と内心つぶやく。
「………」
 会話が止まってしまった。
 ふいに―――、ふたみがシュクシュクと泣き出したのだ。
「ふ、ふ、ふ、ふたみちゃん!?」
 うろたえた。勇太郎は、とにかくうろたえた。会話の前後を思い返して、ふたみを傷つけた言葉は何処にあったかを慌てて探す。
……心当たりが、ない。
(な、なして、どうして、どうなってるの!?)
 この狼狽は、ひとみの部屋で『暗夜奇行』を見つけて、それを読んでいたところにひとみが現れたとき以来だ。一週間を経て再び舞い戻ってきたこの激動を、なんと表現したらよいやら!


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