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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-21

「僕も、普通だと思ってたんだけどなあ」
 そんなふたみの複雑な心根に気づく様子もなく、勇太郎は話を続ける。
 実のところ彼は、先の期末考査で、2科目ほど赤点をいただいてしまったのだ。二つとも数学系だというのが、その学問的嗜好を見事なまでに言い当てている。
「転校したばっかりだもん……仕方ないよ」
「はは。多分、先生も、そのあたり汲んでさ、補修は勘弁してくれたんだろうけど……」
 補修の代わりに与えられた宿題は、まだ、はじめの章節も終わっていない。
「今日は、ふたみちゃんと遊びたかったのになぁ」
「お兄ちゃん……」
 きゅ、と胸が鳴る。
 ぐう、と腹が鳴る。
「………」
 勇太郎だった。
「………ご、ごめん」
 かなり恥ずかしかったりする。時計を見れば、5時少し前。夕飯にはまだ早い。だが、昼食以来なにも口にしていない若い男子なら、もう腹の虫が鳴ってもおかしくない時間帯ではある。
「ひとみちゃんが……」
「ん?」
「カレー、作ってあるの。すぐに、食べられるようにって」
「へえ!」
 さすがは、ひとみだと勇太郎は思う。
「あっためてくる」
「あ、まだ、早いんじゃ?」
「いいよ。ゴハンにしよ」
 ふたみは、カップの乗った盆を手に、台所へと向かった。
 残された勇太郎は、やはり残された宿題に手をつける。いやな事は早く終わらせたいし、区切りのいいところまでいけば、ふたみと遊ぶ時間も出来るかもしれない。苦手な数学のテキストを、なんとかこなす。答えがあっているかどうかは、こうなれば二の次だ。
 それにしても……。
 ふたみと二人きりになったのは、初めてだなと思いつく。ふたみは、ひとみか弥生と一緒にいるときが多いからだ。
改めて、ふたみのことを考えてみる。ひとみとはちがう、おおらかな感じがとてもよい。それと、<お兄ちゃん>と呼ばれるのも、こそばゆいがとっても良い。きょうだいのいない勇太郎だけに、切に思う。
 ふたみは、あまり髪を長くしていない。うなじが見える程度の部分で切りそろえている。それと、その服装も姉妹で対照的だ。動きやすいスタイルを好むひとみは、ほとんどTシャツにトレパンだが、ふたみの場合は、ブラウスにスカートの姿しか見ていない。
 顔のつくりは、よく見れば姉のひとみとよく似てはいる。だが、性格が出るのか、ぽやっとした印象を抱かせ、それが、可愛いほうに作用するのだから、男子生徒に人気があるのも良くわかった。
(あ…)
 手が止まっていた。ふたみが食事の用意をしに居間を出てから、3問ぐらいしか解いていない。
 不意に、ピーピーと音が鳴った。
(? ……レンジの音かな)
 勇太郎は、以前にも聞いたその音に、食欲をそそられる。
 ひとみの作ったカレー……。ぐう、と腹の虫が鳴った。味わってもいないのに、スパイスの香りが口いっぱいに広がる。
 ………。
(あれ?)
 カレーの妄想に浸っていた勇太郎だったが、時間の経過とともに我に帰った。
すぐにふたみが呼びにきてくれると思ったのだが、何故か静かである。盛り付けに時間がかかっているのかとも考えたが、カレーならばそんなに手間がかからないだろう。
 ピーピーとまた音が鳴った。
(?)
 さっきと同じ電子音は、間違いなくレンジのものだ。と、いうことは暖めが完了したカレーは、まだレンジの中にある。
ふたみは、台所にいないのだろうか?
勇太郎は、それを確かめるために居間を出た。


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