『Twins&Lovers』-161
「ふふ……あったかーい」
ひとつ臥所に身を寄せ合って、ひとみはご満悦である。いわゆる“顔射”で汚したその頬は、すでにお風呂によって綺麗に洗い流されている。
もちろん、勇太郎も一緒に湯船の人となったのだが、彼女の身体を隈なく洗ってあげているうちに、乳房と大事なところを触られたひとみがまたしても性欲をもよおしてしまい、おねだりをされるままに、後ろから激しく突き上げてしまった。
「………」
そんな激しいやり取りが嘘のように、まるで子猫のように胸元で丸くなっているひとみ。彼女を見ていると、勇太郎も心が温まってくる。
やはり、人肌こそが最高の暖房だと思う。
「今晩、泊まるつもりだったの……」
ひとみが、顔を埋めたままで言う。勇太郎は優しくそれを抱きしめながら、言葉の続きを待っていた。
「ひとりで寝ると、すっごく寒いから……心も、身体も寒くて、いやだから……」
「………」
「今日はもう、帰らないからね……」
「うん……いいよ」
こんなふうに甘えてくる彼女は、実に久しぶりである。更に強く、廻された腕が勇太郎を抱きしめてくるので、勇太郎もそれに応えるように、ひとみの暖かさを胸に押し包んだ。
「いい夢、見られるといいな……」
既に夢心地のひとみ。
「………」
そんなひとみの体から立昇る甘酸っぱい匂いで胸をいっぱいにして、勇太郎も夢魔のささやきに心を預けてしまおうとしたとき――――、
プルルルル、プルルルル。
「っ!?」
家の電話が鳴った。
「? ……なんだ?」
滅多に鳴らない電話の音が、夜の空気によく響く。
夢魔はもう遠いところへ羽ばたいてしまい、ひとみもまた心地よい眠りの始まりから現実に引き戻され、少し不機嫌な表情をしていた。
「こんな、時間に……」
電話はいまだ鳴り続けている。仕方なく勇太郎は身を起こし、部屋にある子機をやや乱暴に取り上げた。
「もしもし……」
喋り方がぞんざいになったのは、機嫌を損ねているからだ。もしもこれがいたずら電話なり間違い電話だったなら、おそらく怒鳴り散らしていたかもしれない。
『あ、安堂さんですか?』
電話口の相手は、そのいずれでもなかった。しかも、女性の声。
とりあえず勇太郎は、ひとこと、
「はい」
と返事を還す。
『勇太郎さん? 私です! 城南大附属病院の、斉木です!!』
(斉木………)
クラスメイトにいない名前なので、最初はぴんとこなかった。しかしすぐに、勇太郎は正気を取り戻したように受話器に向かって言葉をつなげた。
「斉木久美さん? いったい、どうしたんです?」
こんな時間に――――と言いかけて、不意に冷たいものが背筋を流れた。なぜなら、斉木久美は祖父・郷吉の担当看護師だからだ。