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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-153

その日、杉原は念入りにカルテを見直していた。カルテの名前欄には、“安堂郷吉”とある。この病院に移送されてからまもなく1年になろうという、重病の患者である。
事実、杉原自身も彼の病状を見て、余命は1年前後と計算していた。だからこそ、最終病棟に入院させたのだ。
ところが、いつ頃からか彼の体調は快方へ向かっていった。“快方”というと語弊はあるが、とにかく病状の進行が思ったよりもなくなったのである。場合によっては一時帰宅も許可してよいと判断したくなるほどに。
だが、念には念を入れた。検査の結果を並べ、何度となく数値を見直して。
 今日は、その最終チェックのつもりだった。これで良性の結果がでれば、郷吉に一時帰宅を許可するつもりでいる。今までの経過を考えれば、おそらく問題はあるまい。
 故郷に戻りながら生家に戻れない寂しさを、あのご老体はきっと感じていただろう。それと顔には出さないでいるが、杉原はそう思う。
自分がこのことを告げれば、子供のように無邪気な顔をして喜ぶに違いない。そして、あの勇太郎少年も同じように、笑顔を見せてくれるだろう。
郷吉と、彼を囲む家族のことを思うと、杉原は知らず心が暖かくなってくる自分を見つけていた。
(そういえば、もうすぐ検温の時間だったな)
今日の担当も、斉木久美。おそらく、また額に青筋を立ててがなりたててきそうだ。一時帰宅を許可したら、彼女も喜ぶかもしれない。
(……いや、寂しそうな顔をするかもしれないな)
杉原は知っていた。
いつもセクハラをされているはずの斉木久美だが、いつかの検診の際に、
『さむうなってきましたな。セーターが恋しくなるぐらいに。先生、セーターは手編みに限りますな。あれは、いいものじゃ。身も心も、ほんとうによく暖まる……』
 と郷吉が言っていたとき、なにやら含んだ表情をしていたのを。
もうひとつ、ナースセンターでのちょっとした会話の中に、編物に関する話が斉木久美を中心に成されていたことも、その根拠になろうか。
「お?」
噂…はしていないが、何とやら。
かかかか、と廊下をけたたましく鳴らす音が聞こえてきた。どうやら、まもなく斉木久美の登場らしい。
(ふふふ、またやられたか)
どんな表情を貼りつけて斉木久美が飛び込んでくるか。杉原にはこのとき、まだ余裕を持って時間を待っていることができた。





「う……ひとみ……」
 恋人の熱い体温が、自分を包んでいる。
その中で、まるで生き物のように柔らかい舌が蠢いて、様々な場所を蹂躙し、痺れてしまいそうなほど甘い刺激を送り込んできた。
下を覗き込む。顔中に朱を散らせて、恋人が自分の欲棒にかぶりついている。快活に廻るその舌で、何度も“好き”と言ってくれた唇で、いわゆる“奉仕”をしてくれている。
「………」
 勇太郎の胸に、たまらない愛しさが溢れてきた。今はそれを手のひらに込め、ひとみの髪を撫でてあげることでそれを伝える。
「ん……んん……」
嬉しげに、ひとみの喉が鳴った。そして、さらに深く勇太郎を咽喉に迎える。彼女のこみ上げてくる熱い吐息が亀頭を刺激して、これがまた極上の快美感を生んだ。
「く、う……は……」
こうやって、ひとみに愛されるのは随分久しぶりだ。かといって、セックスがお預けだったわけではない。
例えば週末はほとんど毎回、蒸すような夜を過ごしたし、情欲が高まったときは翌日に学校があるとしても、何度となく汗を散らせたこともある。


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