『Twins&Lovers』-111
じわ、じわ、じわ………。
継続的に溢れ出す愛蜜が、ショーツを濡らす。この頃、濡れ方が激しくなっている。
もしもジローに、こんな痴態を見られたら……。サキは窓に目をやる。まだカーテンを閉じていないが、擦りガラスであるため、外の様子をうかがう事はできない。明かりの点るジローの部屋を確認できるだけだ。
彼はいま、もらった手紙のことを思っているに違いない。いつもは大雑把でぐうたらだけれども、本当は繊細で優しい人だから、悩んでいるはず。
(……そう思うのは、あたしの“願い”か)
ジローに告白したのは、なんといっても学園のマドンナ。悩むことなんて、なにひとつないだろう。
「ジロー……ジロー……あ、あ、あ、あっ!」
指使いを、激しくした。不意に胸に降りた、悲しみを追い出すように。
ぬちゃ、ぬちゃ、ぬちゃ……。
ショーツ越しにもかかわらず、柔らかい粘膜の感触が指を包む。それだけ、布地に染みる水分が増えてきた証であり、すなわち、サキの官能がさらなる高みを目指して歩みを始めた証である。
はぁ、はぁ、はぁ………。
静かな部屋に響く、自分の吐息。
にちゃ、にちゃ、にちゃ………。
そして、淫靡な音。
たまらず、ショーツの中に、手を潜り込ませた。
「―――――っっ!」
直に触れた瞬間、これまでとは比較にならない刺激が身体を駆け上ってきた。じわじわと奥から溢れる淫液が、指にまとわりついてくるのがよくわかる。
(こんなに、こんなに溢れて……いやらしい……)
だけど止めることができない。もっと、もっと欲しい。
(ジロー……ジロー……好きなの、こんなに好きなの……)
溢れる思いを素直に口にできたら、どんなに幸せだろう。
「あ、あ、あ…………んんっ!!」
びくり、と体が震えた。
(い、イク……ジロー、あたし、イキそうっ………)
何度も、何度も、幼なじみの名を思う。たったそれだけで、高みを垣間見た悦楽は、膨張を始めてしまう。指が、その張り詰めたものへ空気を送るように、動きを早める。
くちゃ、くちゃくちゃくちゃ!!
「あ、あああっ!」
それが臨界点を越えて弾けたとき、サキの身体はぶるりと震え、白い光の渦に飲み込まれていった。――――――………』
「………」
「………」
ふいに時計が気になって、顔を上げたふたみは、それより先に目の前に座っている影の姿を確認した。
「へ、兵太さん?」
「ま、まいど……」
沈黙が、間を流れる。兵太は、厚めの文庫本を手にしている。表紙には別の著者の名前と、歴史ものを思わせる表題があった。
かたや、こちらの手には“安納郷市”。
頬が熱くなった。
「あ、あのあのあの………」
おろおろする。いくら相手も読んでいて、その所有物であるとはいえ、面と向かってそれを見られていたと思うと、羞恥に体が熱くなる。
「い、いつからいました?」
「ほんの、5分ばかし前ですわ。声かけようと思ったんですけど、なんや邪魔するの申し訳ない気がして……驚かしたんなら、あやまります」
「い、いえ、いいんです……」
再び、沈黙。手にしている『恋心』を、どうしようもなく持て余す。