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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-108

『………

 サカキ・ジローさま
月が冴えて美しい季節ですね。
こんな季節は、どうしてもあなたのことを想ってしまいます。
どうしても、押さえ切れない気持ちが溢れてしまいます。

…………あなたが、好きです。どうしようもないくらい、好きです。

金曜日の放課後、校舎裏でお待ちしています。
そのときに、お返事を聞かせてください。

                      アマノ・ユリネ

「………アマノって、あのアマノか」
「うわ! スギオカ、いつからそこにいた!?」
「いや、お前が、なんか抜き足で屋上に行くもんだから、つい、な」
「尾行したってか? 悪趣味な……」
 ちなみにスギオカとは、特にジローと親密なクラスメイトである。常に広辞苑を抱いている風変わりな秀才型の人間だったが、不思議と馬が合った。
「それ、完璧にラブレターだな」
「う」
 だからひとりでこっそりと屋上にきたのに。
「しかも、アマノ・ユリネから……それがばれたら、おまえ刺されるだろうな」
「………」
 そう。アマノ・ユリネとは、クラス違いの女子学生で、成績優秀・容姿端麗・性格温厚と三拍子そろった学園のマドンナである。故に、学年問わず数多の男子からアプローチを受けているが、そのすべてが玉砕に終わり、触れることさえ許されない最高級の高嶺の花と謳われていた。
(そんな女の子が、俺に……)
 ジローは赤点・遅刻・補修の常習者である。唯一の自慢は運動神経だが、生来面倒くさがりなので部活には入っていない。
そんな落第少年のいったい何処に、彼女の心を打つものがあったのか。
「あ、あはは。誰だろうな、こんなイタズラすんの」
 そう思うのは必然だ。
 しかし、スギオカは静かに首を振った。
「筆跡からするに、間違いなくアマノ・ユリネ本人のものだ」
「わかるんかい!」
「僕は同じ生徒会にいるからな」
「………」
 彼はクラス委員だ。たしか、ユリネもそうだったはず。なるほど、同じ組織の中にいるのならば、相手のこともいろいろ知っているかもしれない。……その筆跡を言い当てる程となると、警察を呼びたくなるような危険さを感じてしまうのだが。
「アマノのこと、知らないわけではないだろう?」
「まあ……。去年、クラスおんなじだったからな」
 昔というほど以前のことではないが、その記憶を掘り起こしてみる。
あの頃は今のように目立つ女子ではなく、ぽつんとひとりでいることが多かった。席替えのたびに、なぜか近くになるから、いろいろと話を振った覚えがある。購買のパンを買えなかったとかで落ち込んでいたとき、自分が持っていたものをあげたときもある。宿題をみせてもらったことは、日常茶飯事であったので、その礼のつもりだったのだが、偉く感激されて困ったものだ。
2年になってクラスが変わってから、接点はなくなった。皮肉なことに、その頃から、アマノ・ユリネは男子の人気が出始めたのだ。
引っ込み思案で、いつもおどおどしていたが、時折見せる笑顔がとても可愛い娘だった。それに、相手の気持ちがわかる優しい心も持っていた。
だから、周囲もそれにようやく気づいたのだろうと、人事のようにジローは思っていたのだが。


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