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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-109

「……まんざらでも、ないようだな」
「う」
「これは、久々の大スクープだ。学園一の美少女と、学園一のおちこぼれのカップリングとは」
「スギオカ……おちこぼれってのは、ないんじゃないの?」
「ふん。これぐらいの厭味は、序の口と思え」
「ちっ」
 ジローは裏ポケットから白い箱を取り出す。そして、棒状のものを指で掴むと、口にくわえて火をつけた。
 白い煙を、青空に向けて吹く。あまり旨いものではないが、なんとなく心が落ちついてくる。
「エンドウが見たら、なんていうかな?」

 ごほ。

ジローは深いところまで吸い込んでしまった白煙にむせ込み、慌ててそれを吐き出した。
「なんでサキがでてくんだよ」
「あのやり取りを見ていれば、至極自然な質問だと思うが」
「サキとはそんなんじゃねえよ」
「それは、説得力のない回答だ」
「………」
「まあ、部外者が割り込む問題ではないか」
 スギオカは、一本というジェスチャーをした。
「………」
ジローは何も言わず箱を差し出す。
煙草を一本取り出して、スギオカもまたそれを吹かしはじめた。真面目一徹を思わせながら、実はフランクな部分も持つ彼に、ジローは好感を持っていた。
しかし、彼はクラス委員である。それもあって、行動を共にするようになったある時期に、
『あまり学内で評判のよろしくない自分とつるむと、ろくなことにならない』
 と、忠告した事もあった。しかし、そのとき彼は、
『自分の目が節穴でない自負はある』
とだけ、言うと、その話を流してしまったのだ。以来、腹を割った関係は続いている。
「ともあれ、しばらくは騒動が続くな」
「やなこと言うなよ」
「僕は手紙のことは誰にもいうつもりはない。だが、おそらく、アマノ・ユリネの周囲から話は漏れるだろう」
 ゴシップ好きの女子高生に、秘密の話は不可能。
「いい機会じゃないか」
 不意に、スギオカがおかしなことをいった。その真意を取りかねて、ジローは問う。
「なんのだよ」
「いろいろさ」
 しかしスギオカはただ、微笑を浮かべるだけで何も答えようとしなかった。――――――………』



ラブレターの話は、あっという間に広まった。そして当然、サキの耳にもそれは入ってくる。幼稚園の頃から、サキとジローのやり取りを見続けてきた級友のケイコが、心配してサキにそのことを告げたのだ。
話を聞いた瞬間、サキは愕然とした。なにか、大事なものが心の中から剥がれ落ち、散り散りになっていくような感じがして怖くなった。
そして、場面は、その日の夜に移る。



『………

 なんとなく部屋の窓を開けたら、同じことをジローもしていた。期せずして、向き合ったふたり。実は家も隣同士。部屋も隣同士なのはお約束と思っていただきたい。
 顔をあわせたところで、さっそく例の話題が持ち上がるのは自明の理であった。
「へ、へー。よかったじゃないの」
その流れを受けての、サキの言葉だったわけだが、本心でないことは本人が一番わかっている。だが、それを認められるほど、今のサキは素直ではなかった。
「誰かさんと違って、おしとやかだよな」
「……なによ」
「字なんかも、ちっちゃくて、可愛くてよ。柄にもなく、どきどきしちまった」
「……ふん、のろけちゃって」
 ますます意固地になってしまう。本当は、もっと、別のことをいいたいはずなのに。
「末長く、お幸せに!」

 ぴしゃり。


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