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Overtake goodbye
【姉弟相姦 官能小説】

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〜再会〜-10

「そう言えば……結婚って言ったらアイツ、名字が違うって事は、そういう事だよな」

 そう思った時、ある事が頭に浮かんだ。

(だとすると、これを知った吉川は、どんな顔をするだろうな……)

 途端に、俺の脳裡に吉川の情けない顔が貼り付いた。

「ぷっ!くっくっくっ……」

 俺は何て底意地の悪い奴なんだろう。後輩が不幸に陥ろうという時に、笑っちまうなんて。
 とにかく、この件は、知らんぷりしておこう。わざわざ俺が、後輩に引導を渡すなんて損な役回りは御免蒙る。それに、この件は、吉川自身が折り合いを付けなきゃ意味が無い事だ。

「さてっ!晩飯の用意に掛かるか」

 夕闇が迫る頃。俺は最近に無い、揚々とした気分で浴室へ向かった。
 方法としてはイレギュラーなのだろうが、結果として最高の気分転換になった訳だ。





 夕食は、行き付けの定食屋で済ませた。
 店を出てみると、夜の帳は既に下りていて、帰り路、様々な店を飾る照明が、漆黒とのコントラストで鮮やかに輝いている。
 何時もの見慣れた景色が、際立って見えると言うのは、心理的な影響が大きいと、何処かのテレビ番組で聞いた気がする。

(確かに俺の場合は、長岡のおかげだろう)

 この歳になって来ると、心の底から喜べる出来事は、年に数える程しかない。おまけに以前は、友人との出来事が主だったのが、何時の間にか、会社での出来事に入れ替わっていたりするものだ。
 会社の業績を、自分の出来事のように、一喜一憂しているのに気付かされ、強い自虐観念に苛まれた時期を送った事も多少は有る。
 しかし、今日は違う。久しぶりの仲間との再会は、素直に喜ばしいものだ。

 塒(ねぐら)が近付いて来る。空を仰ぎ見ると、晩秋に相応しく、夜空に星影が輝いていた。

(明朝も、冷えるだろうな……)

 足早に部屋へ戻って見ると、真っ暗なリビングでピンク色の小さな光が、瞬いていた。

(誰か、掛けて来たのか?)

 面倒だからと置いて行ったスマホが、不在中に着信が有った事を知らせている──ディスプレイには“亜紀”の二文字。

(こんな時分に、何なんだ?)

 鼓動が早くなるのは、さっき飲んだアルコールが、今頃、効いて来た為じゃない。

(情けない奴だよ、お前は)

 口の中に苦味が広がる。俺の中の“異常者”である部分が、又、頭をもたげようとする。

「どう、するかな……」

 着信が有ったのは二分前。ほんの僅かの差か。

(大事な用なら、また掛けて来るだろう……)

 震災の日から三年半余り。お互いに一度も連絡をした事が無かったのに、突然、寄越して来るなんて、何か有ったと考える方が妥当だ。
 そう結論付けた途端、俺の指は発信を押していた。

 暫しの接続音。やがてコール音へと移り、一回、二回、三回と呼び出しを続けている。


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