告白-6
「お前にとって、そのバインっつう男との思い出は投げ捨てて良いものか?」
違う。
でも、こうでもしないとジルは分かってくれないと思ったから。
ジルを見上げたままのリョウツゥの目に、じわぁっと涙が溢れる。
「別にお前が飛べなくたって里を出る方法なんかいくらでもあったと思うぜ?だけど、翼も目も身体も不自由な奴にはお前を外の世界で守る術がなかった。だから、お前にはいつでも逃げれるように「飛んで」欲しかったんだ」
ジルは視線を反らしてガシガシと頭を掻いた。
「俺には奴の気持ちが分かる。俺だって絶対にお前を守るなんて軽はずみは言えねぇから、逃げる為に「飛んで」ほしいと思う」
話続けるジルがいったい何を言いたいのか分からずに、リョウツゥは目をパチパチさせる。
「気づいてっかもしんねぇけど、俺の仕事はまともな仕事じゃねぇ。俺にはお前を守ってやるって約束できねぇんだ」
そこまで言ったジルはぶはぁっと息を吐き出した。
「自分でも情けねぇし、すっげぇ生殺しだが……俺がまともな人間になるか、お前が飛べるようになるまで……挿入は無しだ」
「ぇ、じゃぁ」
下を向いていたジルがふいに顔を上げる。
その顔は、照れたように少し赤くなって、表情はとても嬉しそうだった。
「俺もお前が好きだよ。この間の求愛も本気だったんだからな」
今度は少し拗ねたような顔になる。
「じ、ジルさんっ」
リョウツゥは堪らずジルの首に抱きついた。
「まあ、他民っつう事で色々障害もあっだろうが……後にしようぜ」
ジルはリョウツゥを軽く抱くと、左手を握って引き寄せる。
「バインと見つけた石で、俺が作った指輪だ。だから、これは俺ら2人分の婚約指輪だ。2人分の想いを受け取ってくれ」
そう言うとリョウツゥの左手薬指に指輪をはめた。
「愛してる。俺の小鳥♪」
「はい。はい。私もです」
リョウツゥは再びジルにすがりつく。
小さな身体をギュッと強く抱き返したジルは、ふと夜空を見上げた。
一際輝く銀の月に、緑の月が寄り添うように輝いていた。
まるで自分達のようだな、と思いながら月から視線を外してリョウツゥを更に強く抱きしめる。
その2つの月の輝きに隠れている暗雲には……気づかなかった。
ー続くー