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飛べない鳥の飛ばし方
【ファンタジー 官能小説】

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再び-6


「ジルさっ……あむ」

 さすがに怒ろうと思って口を開けたら、嬉しそうな顔が覆い被さり、葡萄を口移しされた。

「んむ」

 ジルは葡萄を舌でリョウツゥの口に押し込む。
 そのまま唇で口を塞いでいると、仕方なくリョウツゥは葡萄を噛んだ。
 甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がり、あまりの美味しさに思わず頬が緩む。

「ん、ん、んく」

 しっかり飲み込んだのを確認したジルは少し唇を離して口の端から零れた果汁を舐め取った。

「〜〜〜信じられないっ」

「なんで?オレ、お前好きだぜ?」

「ッッ〜〜〜!い、意味が違います!」

 友達としての好きと、恋愛的な好きとは全く違う。
 緑の民にとって口移しの行為は、性交よりも深い意味があるのだ。

「違わねぇけどなぁ」

「え?」

 ポツリと言ったジルの言葉が良く聞こえず、リョウツゥは聞き返す。

「いや、悪かったよ」

 そう言いながらジルはもうひとつ葡萄を取った。

「食べるか?」

「う……」

 美味しかったので食べたい。

「く、口移しはダメです」

「わぁったよ」

 ジルは若干ふてくされ、葡萄をリョウツゥの口に運んだ。
 素直にあーんと口を開けたリョウツゥは、幸せそうに葡萄を咀嚼する。

(……あれ?)

 確かに美味しいが、さっきの方がずっと甘かった。

(実によって違うのかな……)

 疑問に思いつつ葡萄を飲み込むと、もうひとつ差し出された。
 葡萄を差し出すジルはニコニコとしていて何だか不思議だ。
 またもや素直に口を開けて受け取ると、そのままジルが覆い被さってきた。

「ん??!」

 口の中で葡萄を転がされ、弾けた皮からジュワっと果汁が溢れる。

(あ)

 さっきより全然甘い。

「んふぅ ぷあっ」

「これは口移しにはなんねぇだろ?」

「そ、そうです……ね」

 いや、まずキスしてる時点でおかしいのだが。

「……まだ食う?」

「……食べ ます……」

 なのに、もっと欲しいと答えてしまった。
 それが、葡萄ではなくてジルのキスだという事ぐらい、リョウツゥにも分かっていた。



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