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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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変化-6

「おっ、卵安くなってる、ラッキー。」

この日も多くの客で賑わっている近くのスーパー。買い出しはいつもここで、別のスーパーで買おうと言う気はまるでない、買い出しだってあの自宅に帰るのと同様、不快だけど仕方がなくやっているだけで。

「次は人参にキャベツっと。」

押し潰されそうな孤独感を少しでも和らげる為に独り言をボソボソと口にする。

買い出しも一苦労だなぁ、色々と頭を使わないといけないし、その度にイライラする、何で俺がこんな事を…って。

軽い溜息を吐き、キャベツに手を伸ばす。

「一度、手に持って比べると良いですよ、重さを。」
「え?」

聞いた事のある穏やかな声に、振り向くと。

「柊さん?」
「奇遇ですね、お母さんのお使いか何かで?」
「……。」

彼女は全く知らないのか…。俺は自分も彼女と同じ環境にある事を告げた。

「……。」
「本当、面倒だよ、毎日毎日…。」
「佐伯、君。」

沢山のペットボトルや缶コーヒーが陳列する中、お互い買い物カーを押し、柊さんに愚痴をこぼす。2ℓの緑茶をカゴに入れる。

「買い出しは、嫌…何ですか?」
「嫌、と言えば嫌だな。普通しないだろ?この年齢なら部活に勉強でさぁー。」
「私は、そうは思いません。」
「…何でだよ、理不尽じゃないか、こんな事って。」
「そうですね、確かに。私も最初は嫌でした、お母さんは迎えに来ないし、色々と慣れない環境で…。」
「だったら。」
「でも、私何かの為に色々と面倒を見てくれるお爺ちゃんの為に買い出しや料理をしてあげようって思ってたら、そんな気持ちも何処かに消えてしまいました。」
「……。」
「家族何だから、支え合うのは当然です。」
「柊、さん。」
「毎日の心労、良く分かります。貴方は頑張っていると思います。」

頑張ってる、何かその一言に救われた気分。

「俺は…。」
「何かあったら遠慮なく頼って下さい、貴方は一人じゃありませんから。」
「!!」

彼女の女神のような言葉に今までモヤモヤしていた曇りが一掃した感じだ。

「あ、向こうで今冷凍食品の半額シール貼ってますよ、必要なら今がチャンスです、別の客にすぐに取られちゃいますから。」
「………。」

そう言って刺身のコーナーへと去っていく彼女。



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