ＷＨＯ ＡＲＥ ＹＯＵ？-3
彼女の背中や腰をまさぐり、俺も唇を強く吸った。
「その前にシャワーを」
「いいの。男の汗の匂いって好きよ、汗と埃の匂い」
そう言うと俺の手を取り、奥のベッドルームへ入って行った。
どさりと仰向けにベッドに倒れると「来て」と言った。
完全に彼女のペースだ。
上着を脱ぎ、ネクタイを外して彼女に覆いかぶさる。
夢中でキスを繰り返し、ブラウスのボタンを外した。彼女も俺のシャツのボタンを外す。ブラウスのボタンは小さく、男の太い指で外しにくい。
ブラウスを脱がすと、ブラの肩ひもをずらして乳房を露にした。若い子のように薄いピンクの乳首ではなかったが、何度も男を経験しているであろう熟した乳房には、なんとなく魅力がある。
ガラス細工のように気を使わず、鷲づかみにし強く吸い付くことが許される。ブラジャーをずらし、乳首に吸い付いた。
んっ……ああ、
スカートのファスナーを下ろしながら、舌で乳首を攻める。
「噛んで……」
そう言って、自分の乳房を掴んだ。
俺は言われるまま、硬くなった乳首に歯を立てる。コリッとした感触があった。
「あっ！ああ、もっと……」
部屋の明かりも落とさず、俺たちは快楽の幕を開けた。
真夜中になる頃には、３度目のセックスに耽っていた。
汗と唾液と愛液で体はべたついている。
ラブホではないから、当然ベッドサイドにスキンなんて置いていない。
初めは外に出していたが、彼女はピルを飲んでいるから構わないと言った。
それを鵜呑みにはできず、２回目までは外に出したが、最後には彼女の中で出してしまった。
こんなことは付き合っている彼女にもしたことがなかった。
「お風呂に入らない？」
全裸のまま、彼女はバスタブに湯を張った。
湯船の中でもキスを繰り返した。
バスルームから出ると、バスローブを羽織り冷えたシャンパンを味わった。
疲労と眠気でぼんやりした頭で考えていた。この女は何者なんだろう。経済的には俺なんかよりはるかに豊かなようだ。
女性物のブランドなんてよく知らないが、着ている物も靴やバッグも安物には見えなかった。
彼女はカーテンを開き、窓を開けた。
夜風が心地よかった。下の方から車の音が聞こえて来る。
「私は週末にここに泊まってるの。気が向いたらまた来てくれる？」
「ああ」
空になったグラスを置くと、俺はごろりとベッドに横たわりそのまま眠ってしまった。
朝になると、彼女はルームサービスで部屋に朝食を頼みそれを二人で食べた。
「これからどうするの？」
尋ねると「そうねぇ」と外を見た。
「今日は家に帰ろうかしら」
「どこに住んでいるんだ？」
「内緒。私もあなたに何も聞かないでしょ？余計な情報なんかない方がいいのよ」
彼女は化粧を済ませ、バッグを肩にかけるとドアを開け俺を促した。
「ドアを出たら、別々に行きましょう」
「あ、ああ」
言葉どおりドアを閉めると、彼女はさっさとエレベーターに向かいボタンを押した。無言で１階に降り、俺を振り向きもせずにホテルを出て行った。
その後姿を見ながら、俺は少しばかり寂しい気分になる。
夜はあれだけ激しくもつれあった二人なのに、なんの言葉もなく去っていく女。
でも、俺はまたこのホテルを、彼女を訪ねるだろう。そう思いながら、ホテルを見上げていた。