『私の2回目のひと』-6
「何?」
「もっとしてください…」
「何を?」
またあの、笑顔。
「お願い…我慢できな…」
「だから何をしてほしいの?言ってくれないとわからない」
「これを…」
私は熱に浮かされたように目の前で固くなっている塗らぬらと光るそれをそっと握った。
「どうするの?」
「私の中に…いれてください…」
振り絞るようにそういって私は目を閉じた。
「ま、今日はそれで許すか」
(今日は?それって…)
左手で脚がぐいっと広げられ、高橋さんのものが押し付けられる。右手で緩めたネクタイをシュッと引き抜いて投げ捨てる。早く欲しくて、自然と腰が浮いてしまう。笑顔でわたしを見下ろしながらゆっくりそれが入ってくる。
「う…んああああああっ!!!」
中全体が刺激され、じーんとする快感が体を支配する。ゆっくりだった腰の動きがどんどん速くなる。
「気持ちいい?ななえちゃん」
「気持ちいい…気持ちいいの…ああああっ!いくいっく…ああああっ!」
「変態だなほんとに」
「違う…ああっ!あっ!私そんな…はあはあ…んんんんんーっ!!」
「あー気持ちい…」
「ああああっ!はああんっ!!」
高橋さんが抜き差しする度にどんどん床がびしょびしょになっていく。卑猥な音が響き渡る。
「やだあっ…止まらないよう…こわいよう…」
「俺そろろろいきそう…いくよ?」
「私もまた…またいく…んああああああっ!!!」
「ううっ!」
高橋さんの動きが止まり、ギリギリのところでそれが引き抜かれた。私の愛液と一緒に白い液体が飛び散るのを見た。
「はあっ…はあっ…」
私の上に倒れ込んだ高橋さんの荒い息が耳にかかる。私はなぜだか高橋さんの背中にそっと腕を回してきゅっと抱き締めていた。
どのくらいの時間そうしていたのか。相変わらず父親のいびきが部屋に響き渡っている。
(気づかれなくてよかった…)
ほっとしていると、高橋さんが急に口を開いた。
「ななえちゃん、お母さんがどうして死んじゃったのか知ってる?」
「えっ…事故でって聞いてます。交通事故で…なんでそんなこと」
(高橋さんがどうしてお母さんのことなんて知ってるんだろう)
唐突にそんなことを言われて戸惑う。まだ体が熱くて頭がぼうっとする。正常な判断ができない。
水道の蛇口がきちんとしまっていなかったのか。今まで気にならなかった水音がやたら大きく聞こえる。
「ほんとのこと知りたい?」
「高橋さん?」
うっすら目を開けると目の前に高橋さんの顔。でも笑顔じゃない。初めて見る、冷たい顔ー。
「ななえちゃんの母親はね、ほんとはね、俺の父親と一緒に死んだんだよ」