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まことの筥
【二次創作 官能小説】

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まことの筥-18

 女童の進言はなるほどと思うところはあるものの、返す返すも子供っぽい愚かしいことだった。だが侍従の姿と重ねて想像するだにあまりにも魅惑に満ちていた。平中は不意に硬くなってしまった肉竿を子供の前だからと心中で諌めつつ、思わず頷いてしまっていた。
 約束の日、生け垣の陰で待っていると簀子に女童が現れた。
(おお……あれが)
 香染色の薄布に包み、赤い扇で蓋をした物を携えた女童は周囲へ注意を払うと、もし、と平中を呼んだ。急いで駆け寄ると、
「今しがた侍従様がなされたものです。人に渡したとなればいかなる罰を受けるか分かりませぬ。早やお持ちくださいませ」
 と胸元に押し付けてきた。穢い物を体に押し付けられては不快な思いをするべきところだが、くるまれている物が確かに筥であり、揺らすと中からちゃぷんと汁物の音がするものだから、
「ありがとう。恩に切るよ」
 と言ってそそくさと消えていった。
 平中は大事に宝物を胸に抱き、本院の中庭をうろついているとお誂え向きに古くなって建て直しを待っている物置小屋を見つけた。鍵はかかっておらず、中は湿って使えなくなった薪や毛羽立った筵が無造作に転がっているだけだった。戸を閉めると、薪を積んで台を作った上へ供えるように筥を置く。
 女童に押し付けられた時から、並々の物ではないと思っていた。筥なぞを運び出すためにこのような雅色の布でくるみ、扇で蓋などするものか。それともあの侍従という女は、こういったところまで気遣いを見せて己の美しさを誇っているのだろうか。そして扇の蓋の隙から立つ芳薫。震える手で扇を除け、布を紐解くと、より強まる香りは丁子香に間違いない。
 鼻をもぐような悪臭に苛まれると思っていたら、狭い小屋が眩暈を起こしそうなほどの麗しい香に包まれた。汚い物を見せられるよりも、人智を超えた業物を思い知らされそうな恐怖に慄きつつ、平中は勇気を出して中を覗き見た。
 筥の中にはいくつかの粘糞が底に溜まる小水に浸されていた。あの気高い侍従とて人の子なればこそ、ひり出す糞は臭く厭わしいものだろう。そう期待していたのに、目の前にある物は、見た形は自分でも為したことのある穢物に間違いないのに、怖ろしくなるほど自分を誘ってくる。足元に落ちていた枝木を手に取り、転がる粘糞へ突き刺すと鼻先に掲げて嗅いだ。筥に漂うのと同じ香が強まり、平中の鼻腔を惑わせる。
「ああ……侍従、あなたはその御身から垂れ流すものもかくて麗しいのか」
 平中とて、目の前の糞が作り物であることには気づいていた。だが、あの夜添い寝までさせておきながら、最後の最後で腕の中からするりと抜けていなくなってしまったむごい女は、せめて汚物なりとも見せて欲しい卑しい願いにすら応えてくれず、脳の髄を爛れ落とすほど華麗に仮飾してみせている。平中はまことの物ではないと分かってはいても虚構に身を委ね、己が愛する侍従の排泄は、枝木の先にぶら下がっている練り物に相違ないと信じ、袴の中であらん限りの男欲を漲らせていた。
「もう……、耐えられぬ。侍従……、侍従!」
 平中は魘されるようにかの女の名を呼び、埃まみれの筵の上で袴を脱ぎ捨てると狩衣の裾から突き出る肉幹を握って扱き始めた。どれだけ己を諌めても誘惑には抗えず、枝先の練り物に唇を押し当てて端を齧り、口の中に甘蔓の味が広がると指の中で怒張が何度も猛って筵の上に透きとおった粘液を撒き散らした。


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