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たぎる
【その他 官能小説】

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たぎる-3

(3)

 交わった翌朝、平静を装いながら、正彦と目を合わせることができなかった。彼はいつもと変わらなかったように思う。一つ違いの姉の紗枝と朝から些細なことで口喧嘩をしながら慌ただしくトーストを頬張り、牛乳で流し込む。毎朝の光景であった。

 子供たちを送り出したあと、木綿子はひとり、想いに沈んだ。考えることはむろん昨夜のことである。だが、
(ちがう……)
感情は戸惑いの中にありながら、気持ちの重さがゆうべとは異質な感じなのである。
(罪悪感がうすらいでいる……)
息子とセックスをしたというのに、昨夜の収拾のつかない想いがなくなっていた。夢だった、事故のようなものだったと忘れようとしていたのではなかった。むしろ行為をしっかり受け止めていた。少なくとも股間は貫通の感触を引きずっていた。それは、明らかに『女』としての残り火であった。

(血だろうか……きっとそうだ……)
そう考えて木綿子の心は小さな眩しいさざ波を立てたのだった。

 正彦は木綿子の実子ではない。夫とは互いにバツ1.正彦がが1歳の時、彼女は2歳の紗枝を連れて再婚したのである。だから血のつながりはない。
 そのことで正当化できるほど軽い問題ではないが、心の根底に動かしようのない強固な事実として厳然としている。
 1歳から育てたのである。ぐずった時には乳首を含ませたこともある。わが子同然と接してきたつもりだったのだが、どこかで異なる『血』を感じていたのだろうか。……
 それはあったのかもしれない。事実、自分の血は流れていないのだから。だが成長する正彦に『異性』を感じたことはない。自分ではそう思っていた。……

 正彦はどうだったのだろう。実はまだ親子関係のことは話していない。それは娘の紗枝にもである。いずれ知ることになるだろうが、
「そのうち時期がくるだろう」
夫も成行きに任せる考えでいる。
 幼かったから記憶はないとは思う。戸籍を見る機会もなかったはずだ。
 それなのに自分を求めてきた。母親に女を感じて抱きついてきたのである。漲る性欲を抑えることができなかったのか。それとも、本能的に『血』を感じたということなのだろうか。

 もう一つ気になることがあった。
正彦は、
(経験がある……)
そう思ったのである。
 切迫した息遣いから射精を間近と察知して腰を引いて抜いた、のだが、同時に正彦も引いたように思えたのだった。
(いや、たしかに抜いた……)
彼はその瞬間、わずかに腰を上げ、直後、木綿子の下腹部に放ったのだ。……
もし初体験だったら寸前でそんなことができるだろうか。彼女に男の生理はよくわからないが、初めてならそこまでの余裕はないように思える。

 木綿子の初体験は高校三年の時、相手は同級生だった。学校帰りに誘われるまま彼の家に寄った。それまで何度か訪れて母親とも顔を合わせていたので何のためらいもなかった。だが部屋に入って家人が留守だと知ったとたん、緊張に包まれた。
(2人きり……彼の部屋……)
思い返すと彼の様子から留守を承知で誘われたようだと気づいた。
 緊張したのは身の危険によるものではなかった。
(セックスするかもしれない……)
意識下に潜んでいた性の蕾が蜜を湛えながら開花したのだった。
 キスをされてからは記憶がないくらい昂奮して頭は朦朧。押し込まれた圧迫に、
「だめ!」
口走ったものの体はどうにもならなかった。昂奮は彼も同じ。あっという間に迸った。
 幸い妊娠することはなかったが、高校生の初体験はそんなものだと思う。

 正彦は昂奮しつつもがむしゃらにしがみついてきたのではなかった。重なって、すぐにあてがい、一気に挿入してきた。あの行為の素早さは、
(初めてではない……)

(でも……)
彼女がいるなんて聞いたこともない。親の知らない世界はあるだろうが、日常の生活パターンを見ている限り異性の影はないように思う。帰宅時間もだいたい決まっているし、休日も家にいることが多い。
(いつ、経験したんだろう……。そして、誰と……)
いまも付き合っているのだろうか。……
 もやもやした想いが広がっていった。その想いは、靄のようでいてなぜか粘着質で、まるで心の壁にくっついたように消えなかった。

 不快だった。微妙な苛立ちに似た不安定ないやな気持が滞っていた。
(この気持ちはどこからくるのだろう……)
息子が心配なのか?……
 その想いはたしかにあった。母親として、息子の交際相手が気にかかるのは自然な感情の流れである。
 どんな女と関係しているのか。遊ばれているのではないか。これから受験。まだ高校生なのだ。……
 しかし、それとは別に感情の底に熱く蠢くものがあるのを木綿子は自覚していた。それは、
(嫉妬……)
その情念に気づいた時、木綿子は背筋にかすかな戦慄を覚えた。
 自分の肉襞をえぐったペニスが他の女の愛液にまみれた。……生々しい妄想が浮かんで胸が締め付けられた。
(何を考えているんだろう……息子ではないか……)
しかし、振り払っても邪念は粘液にまみれるばかりだった。
 こんなに心が乱れるのも体が満たされないせいだ。
(あなた、早く帰ってきて……)
夫の肉棒を脳裏に描きながら木綿子の指はいつか裂け目の奥へと沈んでいった。
 
 
 
 
 

 
   
 
 
 


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