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飛べない鳥の飛ばし方
【ファンタジー 官能小説】

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秘密の部屋-1


 ゆらゆらゆらゆら

 視界いっぱいに広がった水の世界。
 酷く心地良いこの世界が好きだ。

ーこのまま死ねたら良いのに

 水の中でそんな事を考える。
 揺らめく視線を動かすと、魚鱗を生やした自分の下半身が見えた。
 光を反射して煌めく鱗は我ながら綺麗だと思う。
 しかし、部分的に鱗が剥がされて細い管が刺さっているのが残念だ。

ピピ

 無機質な機械音がした途端、管の中を何かが流れる。

「!!!!」

 ゴボッと口から水が溢れた。
 管は身体中に刺さっており、それぞれから何かが身体に入ってくる。
 煮えたぎった鉄でも流されているのではないだろうか、と思う程の激痛に襲われ、水の中で大暴れした。
 時間にして2分程の間だったが、1時間にも2時間にも感じる。
 ふいに痛みが切れて、胸を抱えてうずくまった。
 首筋にあるエラが忙しなく動いて酸素を取り入れる。

ーまた、生き延びた

 ゴポゴポと水が流れ出る音がして、水位が下がっていく。
 頭が水から出ると一気に口から空気を取り込み、肺呼吸に切り替えた。

「ゴホッ」

 激痛の余韻で身体を支えられず、水が抜けきった水槽の中で崩れる。
 いつものようにワラワラと手が伸びてきて身体から無数に伸びている管を抜いていった。

(……なにもこんなに生々しく作らなくても良いだろうに……)

 伸びてくる手は本物の手ではなく、アーム型の機械にシリコン加工しているものだ。
 確かに、金属が当たらないから傷つく心配はないが、二の腕から先しかない沢山の手が自分に群がっているのは正直気持ち悪い。
 しかも女性の手のようにしなやかな造りなのが輪をかけて嫌だ。

「ッ はぁ はぁ」

 管を全て抜くと手達は壁の中に消えていく。
 残された身体にふわりと肌触りの良いタオルが掛けられた。

「……ありがとう」

 タオルを掛けてくれたのは赤の民の少女だ。
 真っ白で無機質な四角い部屋の中にある、自分以外で唯一の生きている存在。
 褐色の肌に白い髪、赤い目をした典型的な赤の民の彼女はとても無口だが、居てくれるだけでかなり救いになってくれている。
 彼女はふるふると首を横に振ると、まだ動けない身体を甲斐甲斐しく拭いてくれた。



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