秘密の部屋-8
一気に体温が上がり、ゾワリと何かが身体の中から湧き出る。
「ッあ゛ぅ?!」
痛くはないが身体中からミシミシと音が鳴り、ザワザワと肌が泡立った。
「お、おいっ!光ってるぞ?!」
彼女の悲鳴のような言葉に自分の手を見てみると、確かに淡く光っている。
「???」
激しい動悸に、冷や汗、息切れ、それに発光。
これはいったい何だ?自分に何が起こっている?
頭の中がぐるぐるして軽く目眩を起こした時、いきなり目の前にバサアっと金色の髪が掛かってきた。
「ヒッ」
彼女が信じられない、と息を飲む。
(……ああ……)
彼女の瞳に映っている自分の姿に、実験の内容が分かった気がした。
「……貴女の目に、何が見えてますか?」
「あ、あぁ」
彼女はガチガチと震え、言葉にならない声を漏らす。
彼女の目に映っているのは、見たことのない男だった。
ボリュームのある長い金髪、そこから生えた獣耳、背中からは巨大な翼、目の端っこに映るのは金色の鱗を持つ爬虫類の尻尾。
多分、水に入れてば下半身が魚に変化するのだろう。
つまり、赤、青、緑、銀、4つの民全部の特徴を持つ人間を創る事。
それがこの実験の目的だ。
「……成る程、身体に流されていたのは各民のDNAって事ですか……」
多分、それだけではないのだろう。
各民の風習や知識なども頭にインプットされている。
だから彼女の肌に浮かぶ鱗についても驚く事なく納得できたのだ。
その彼女は蒼白になりながら、震える手を伸ばす。
ふるふると細かい振動が頬に伝わり、思わず苦笑した。
「すみません。怖い思いをさせましたね」
「な、中身は……」
「?ああ、ええ。そうですね……何も変わって無いようです」
自分の答えに彼女はホッと息を吐き、同時に震えが止まった。
「そうか……良かった……」
良かった?のか?
自分の疑問が分かったのか、彼女は顔を赤くしてまくし立てた。
「な、中身が同じなら、お前はお前だろう。外見など……そう、問題では……な……ッ?!」
彼女の言葉が終わる前に感極まって口を唇で塞いだ。
「ん?!んんぅ」
驚いた彼女は目を見開いてパタパタと暴れる。