植物園へいこう-5
「……お前の趣味か?」
確かに似合ってるし可愛いが、仕事着としてはどうなのか?
「こ、これはヴェルメさんの趣味で……」
「ああ、なるほど」
きっと「これがいい。これが似合う。うん。そうしよう。是非、そうしよう」と自己完結して強引に着せているのだろう。
(……結構、気が合いそうだ……)
薄めの桜色でほわんとした雰囲気だが、リョウツゥの黒い尾羽がそれを引き締めていた。
ただ、可愛いのが好きというだけでなく、ちゃんとリョウツゥに似合うものをチョイスしている。
なかなか良い趣味だ。
「あの、ご案内、します、ね?」
「お、おぅ」
つい頭の中でツナギを着たままのリョウツゥとの淫らな行為を思い浮かべてしまい、ジルは頭を軽く叩いてからリョウツゥの横に並ぶ。
植物園はリョウツゥが自慢するだけあって非常に立派だった。
特に植物に興味の無かったジルでさえ、夢中になってしまう程だ。
しかし、仕事も忘れてはいない。
案内されつつ、どんな設備を使っているのかも聞いて、その設備に必要な面積を頭の中で計算する。
結果的に導き出された必要最低限の広さより、この植物園はかなり大きかった。
(やっぱ広い……つうか広過ぎだな……)
ここで働いているリョウツゥにも分からないように、巧み広さを誤魔化しているが、客観的に見てみるとかなりの無駄がある。
(丁度、各エリアに隠し部屋がひとつあるって感じかな)
そして、それぞれに隠し通路が続いている感じ。
ジルはリョウツゥの話をメモるふりをして、園内の見取図を手早く書いた。
「あの、最後に、私の茸達……見ます?」
園を一周した後、出口近くでリョウツゥがもじもじしながら言った。
「おう」
菌類は地下にあるらしいし、ジル的にも更に調べられるので大歓迎だ。
見学が終わるとジルはアパートに戻り、パソコンにかじりつく。
クアトリアの地図と調べあげた植物園内部の見取図を重ねると、思った通りの結果になった。
(植物園は表向きで、何かを隠してる?)
だったらいったい何を?
ジルはパソコン画面を眺めながら地下での事を考えていた。
地下におりた時、足音の反響音がおかしかったのだ。