第二話-10
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合皮の長椅子に横たわる佐伯の太股を抱え込み、孝顕は濡れた秘所に顔を伏せている。太股に置いている手の一方を、腰から尻、内腿へと時折滑らせては撫で回した。
「んああぁっ……、ああん、はあぁ……」
溝に辿って舌を差し込んでねっとりと這うように舐め回し、壺の入り口をくすぐっては、零れる淫液を秘裂に塗りつける事数度。粘液にまみれぬるついた肉芽を尖らせた舌先で強弱をつけて舐りながら、淫液を溢れさせる膣の中へ一定のリズムで二本の指を出入りさせる。
「ああん……、ああ……、ああん……」
自身の中心に生まれる緩い快感がもどかしく、佐伯は自分の股間に奉仕する少年の頭に両手を伸ばした。高まる感情を示すように黒髪をかき乱す。
教師の仕草が気に障ったのか、孝顕は僅かに視線を上げると情欲に溺れる瞳を見つめ返した。視線を合わせたまま舌を出し、見せ付けるように淫核を強めに舐め回しては音を立てて吸い上げた。
「はああああっ――――っ!」
強い刺激に佐伯の肢体がうねり、卑猥なあえぎ声が狭い室内に響く。
「ぁああん……、あんっ、あっ……、あっ」
腰を戦慄(わなな)かせる佐伯に構うことなく、孝顕は目を逸らさずに延々と責め続けた。
黙々と陰部を嬲る少年の透明な表情に妙な色気を感じ、佐伯は視線を外せないでいた。蔑まれているようで辛く恥ずかいいのに、そうと意識すればする程、身体は高揚していく。膣洞の奥にじわりと淫液が滲みだす感覚があった。粘着質で卑猥な水音が次第に大きくなっていく。堪らなく恥ずかしかった。
目元を劣情に染めて夢中で快楽を拾いあげる教師を躱すように、すうと孝顕の視線が横へ流れた。太股に這わせていた左手に目をやり、腕時計の数字を見て昼休みが終るまでの残り時間を確かめる。
「っ……! んあぁ、駄目ぇ……そこ、あ、ああ──っ!」
奥へ入れていた指を引き、ざらつきのある入り口近くの肉を揉みこむようにかき回してやると佐伯の声が跳ねた。孝顕の指が動くたびに湿った摩擦音が室内に流れる。
鼻に掛かる甘い声を耳障りに思いながら、孝顕は短時間で女をイかせるために淡々と作業を続けた──。
その日、突然呼び出されたのは体育館裏にある部室棟の内の一つだった。
運動部の専用グラウンドからは比較的近いが、隣は物置だったり部室棟の一番端で校舎から地味に離れているためなのか、何時までも本来の役目を果たすことは無く、放課後や昼休みには人の往来が殆ど無い。
(一昨日のメールでは放課後と言っていたのに……)
予定外に呼び出されたのは初めてだった。簡単に昼食を済ませ、五時限目の準備をしてから急いでここに向かったのだ。
部室内に入るなり貪る様に口内を犯され、身体をまさぐり今に至っていた。
「突然で断られるかと思ったけど、来てくれたわね。ちゃーんと」
「……」
一段落して互いに身なりを整えた後、佐伯が満足げに孝顕に話しかけた。微かにからかいの色がある。
もしや試したのかと、孝顕は非難の視線を投げた。
突き刺さる無言の抗議を平然と受け流し、佐伯は部屋の換気をするために窓を開ける。事後に漂う独特の匂いを追いやるように空気が流れ始め、室内を隠すために引かれていたカーテンが揺れた。
「行っていいわよ、時間が無いでしょ。後はやっておくから」
言葉を受けて孝顕は部室を後にする。
外に出てドアを閉める間際、含み笑う佐伯の声が聞こえた。
「続きは放課後にね」
ドアを閉め終わると教室を目指して走り出した。