変質の楔-1
またっ…… いつもの夢？
もうひとりのわたしの記憶を…… ただ茫然と省みるだけの単純な夢っ…… を視ているだけ。
……またっ わたしっ セックスしてる？ させられてる？
『恵利子！』
（ほんとうに単純な夢）
『おいっ！ 恵利子、なにをぼぉ〜っとっ、突っ立てるんだ。さっさと脱げ、時間がねぇんだろ？』
（これはもうひとりのわたしで、わたしじゃない）
『おいっ！ 少しは気分出せよ』
「…… 」
『…… まぁ、もっとも俺はこうやって、射精（出せ）さえ出来れば同じなんだがな』
《ぬるりっ 》
嫌な感触が大きな抵抗感を持って潜り込ん来る。
単純かつ一定のリズムで、天井にある灯りがゆらゆらと揺れているのを感じる。
『あいつのをシコタマ咥え込んできたんだろ？ 澄ました顔していても、恵利子、おまえにもマンコが付いている。そして今、こうしてマンコしている』
男の卑下た言葉が遠くに聞こえる。
「ぅうっ」
おとこの身勝手かつ一方的な挿入と交接に、上下の口元が軋み歪む。
嫌で嫌で堪らない行為にも関わらず、受容れざろうえない現実。
『おまえの希望通り、しっかりゴムはめて（避妊して）やってるんだから、もう少し協力してもらいたいもんだな？ そんなツラされてたんじゃ、萎えちまう。もっともこっちの方は随分と暖まって、良い具合になってきたぜ』
《ぐっぷぅ、ぐっぷぅっ、ぐぷっぐっぷっ…… 》
心とは裏腹に耳を塞ぎたくなる淫靡な音が、互いの結合部より漏れ始め薄暗い室内に響く。
『ほらっ、しっかりケツを突出すよう持ち上げるんだよ』
仰向けの体勢から、口汚く罵られ後背位を促される。
《ビチぃっ！！！》
数秒の間隔をおいて後背位を愚図る臀部には、漫画的擬音と共に赤々とした手形が痛烈な痛みと共に浮かび上がる。
『何を愚図愚図していやがる！ さっさと挿（い）れ易いようケツを向けるんだ」
後背位、突き立てられた陰茎は、先程までの単純かつ直線的な動きとは一転する。
まるで独立した意思を持つ生物が如く、不規則な動きで膣内を蹂躙し始める。
それはまるで、少女に僅かに残された清らかさを削り取るような淫猥な動き。
根元まで捻じ込まれた陰茎は不規則な弧を描きつつ、徐々に曳き抜かれながら探り続ける。
繰り返し繰り返し、曳き抜き挿し込みを繰り返されながら、陰茎先端括れは膣内壁を弄り探る。
恋い焦がれ続けた少女との交接に、男の口元は歪み愉悦の表情を浮かべるも、その淫欲に満ちた眼は一点に注ぎ込まれる。
もちろんそれは抜き差しが繰り返される結合部周辺に他ならなかったが、より注意深くその動向を観察するはその直上。
チャコールグレイに絞り込まれる窄まり…… それは残された、もうひとつの処女孔。
（恵利子、おまえの下の口はおろか、上の口まであいつのキンタマで開通済みなのは先刻承知。俺は…… 俺はどうしてもお前の泣き顔がみてぇ…… 痛みと喪失に打ち震えるお前の泣き顔がみてぇ！ しかし、今は！！！）
内に巣食う身悶えるような嫉妬にあって、淫猥なる眼は結合部直上にある絞り込みの微々たる戦慄きを見逃さなかった。
《ねちゅ、ねちゅ、ねちゅっねちゅねちゅっ…… 》
永遠抜き差しが続けられる結合部からは、当初観受けられた憂いは失せ、代わりに粘着度の高い淫音と共に妖しい光りが宿りはじめる。
（ここなんだろ？ 恵利子！？）
男は腰の位置を落とし抜き差しする陰茎の角度を変えると、より大きな摩擦を持って先端部で探り当てた膣内壁部を擦り抉り込む。
「はあぁぁっっ ぁぁあっ ぁっ ぁっ ぁぁぁ」
忌み嫌いながらもその心とは裏腹に、少女の胎内には甘美な旋律が奏ではじめる。
そして抗いきれずに、挿し貫かれる双球の膨らみが揺れ動きはじめる。
『！！！』
「…… っあぁぁ ぁあっ そこぉぅ そぉこぉっ そこっ もっとぉぅ もっとぉ」
（堪らねぇ！ 堪らねぇぜ、恵利子！ そうだ、もっと深く、もっと味わうんだ。そして俺様の陰茎を射精へと誘うんだ）
藤岡精児は狂喜していた。
しかしあえてその想いを口にする事無く、心中にて思い止めるのである。
そしてより注意深く観察するのである。
激情に身を任せその心赴くままに、煮え滾る“精”を吐出するのでなく。
目前に在る狂おしい程に欲した対象を我が物にする為に……
貧欲な膨らみ魅せる陰茎を膣深く咥え込み、結合部はより憂いを増し続けて行く。
途端、抜き差しを繰り返していた陰茎の動きが止まる。
数秒っ…… の間隔をおいて、その不条理さ故に揺れ動く。
まるで更なる快楽の注入を欲し、ねだり、せがむように、ゆらゆらと揺れ動きはじめる。
（おっと！）
憂い苛みはじめた麗膣より、精児の陰茎が曳き抜かれる。