ロックシンガー D-1
「そのお顔は・・・」
「ん?テレビで見るのとは違っているとでも言いたいのかな?」
「メイクを落とされるとそう言うお顔だったんですね」
「勘違いしてもらっては困る、君がTVなどで見る、あれが素顔であってだな、こっちは世を忍ぶ仮の姿である」
「え?」
「いや、素顔で街を歩くと目だって仕方がないのでな、人間界で暮らしている時は世を忍ぶ仮の姿が必要と言うわけだ」
「あ・・・なるほど・・・」
「ほう、理解が早いな、中々頭が良い、学校でも勉強が出来るのではないかな?」
Dはにやりと笑った・・・そこになんとなくTVで見るDの面影が浮かんだ。
今日の顧客はロックシンガーのD。
通常、派遣されるに当って偽装工作が必要なのだが、今回は部屋に入る時に廊下に気を配る程度で特に偽装は必要ないと言われていた。
Dは悪魔を自称し、素顔がわからないほどのメイクで人前に出る・・・考えてみればそのままの顔で街を歩くはずもない。
ただ、メイクを落とした顔の方を「世を忍ぶ仮の姿」と言い張るところにユーモアセンスを感じる。
演じるキャラクターが現実離れしている分、逆に使い分けが容易で、オフの時もこの様にすぐにスイッチを入れることが出来、自分でもそれを楽しめるのかもしれない。
「ふむ、人間の12歳と言うのはこのようなものか」
「はい、でも私は少し小さい方で・・・普通はもう10センチくらい背がありますし、胸も・・・」
「いやいや、こう言うのもどうかとは思うが、12歳の人間のコールガールがいると聞いた時にだな、思い切り小さい娘を思い浮かべたのだよ、我輩のイメージにぴったりの娘が来てくれて実は喜んでおる」
「安心しました」
「実を言うとだな、悪魔界の女性と言うものはおおむね君くらいの大きさと体つきなのだ」
「そうなんですか?でも、私はまだ赤ちゃんを産める体にもなっていませんけど」
「悪魔の場合は己の細胞から子供を培養するのだよ」
「では、セックスは・・・」
「それは生殖などと言う原始的な行為とは切り離して、純粋な悦びの為の行為として行われている、君は今、まだ生殖機能を備えていないと言ったが、生殖と言う目的のないセックスの方が純粋だとは思わないか?」
「うふふ・・・思います」
「中々聡明だな、ノリも良くて気に入ったぞ」
「ありがとうございます」
調子が狂う・・・と言う感じは微塵もない、むしろ乗せられてしまう。
『ストリップ』の間もDが視線を逸らしていないのに気づいていた。
「君は後ろ向きで服を脱いで、ゆっくり振り返ったわけだが、それは人間の男に気兼ねなくストリップを鑑賞させようと言う意図からそうしているのではないか?」
「はい、実はそのとおりなんです、お見通しなんですね」
「だが我輩は最初から最後までじっくりと見させてもらったぞ」
「はい、なにしろ今は世を忍ぶ仮の姿でいらっしゃいますから気兼ねなど・・・」
「ははは、うん、実に愉快だ、聡明な娘であるな」
「この先はいつもお客様に脱がせていただくのですが・・・」
「それは良い演出だな、我輩もそうすることにしよう」
Dは一枚一枚、さおりの体を鑑賞し、指でもその感触を楽しみながら脱がせて行く。
「お風呂は?」
「悪魔は清潔好きなのだ、人間より高尚な存在であるわけだからな」
「ごいっしょに・・・」
「うむ、そうしよう、我輩もそれを望んでおるぞ」
「うむ、美しいな、実にピュアだ、汚れのない美とはこのような物を言うのであろうな」
「私、コールガールですから・・・」
「性交を何度も重ねているから汚れているなどと言うのは実に狭量な了見だと我輩は考える、滑らかな肌、つややかな髪、つるつるの性器、伸びやかな手足、そしてなだらかな曲線美、それらを指して汚れのない美と表現したのだ」
「え?あ・・・ありがとうございます」
「君は悪魔界に行ってもモテると思うぞ」
「そうなんですか?それは光栄です、悪魔界にはどのように行けば?」
「ああ、自由に行き来できるようになるには10万年かかるのでな・・・」
「それは残念です」
「まあ、人間は老化が早いからな、しかし、だからこそ、今この瞬間にしかない美というものもあるものだ、その意味では悪魔の女性よりも美しいかも知れんな」
「ありがとうございます、今宵は存分に可愛がってくださいませ」
「ははは、実にウィットに富んでいるな、とてもまだ12歳とは思えないぞ」