痛みと悦び-4
「あの、とてもお節介で、ご迷惑かも……なんですけど……」
「?」
「ご飯、作りました」
「おぅ、さんきゅ」
差し入れはいつもドアにかけてるくせに、今日は手渡しとは……やはり何かあったのではないか?とジルは俯いたリョウツゥの顔を下から覗く。
「それだけか?」
「っ」
ジルに言われた途端、リョウツゥは顔を真っ赤にして手提げ袋を突き出した。
「や、やっぱり、ご迷惑なので、あの、これ、食べて、下さいっ」
全然、話が噛み合わないが?
迷惑かもと差し入れしておきながら、やっぱり迷惑だから食べてくれとはどういう事か?
とにかくぷるぷるしたまま捧げられている手提げ袋を受け取ろうとしたジルは、リョウツゥの手に触れた瞬間ギョッとした。
「おまっ……すっげぇ冷えてんじゃねぇかっ」
「わきゃ?!」
手提げ袋を乱暴に奪ったジルは、リョウツゥの手を両手で包んで擦る。
「馬鹿じゃねぇの?いつもみたいにドアにかけとけよ」
「それは……その……」
「とりあえず入れ。冷たすぎ」
言い淀むリョウツゥを引っ張って無理矢理自分の部屋に招き入れたジルは、彼女の手を擦りながら尻尾を器用に使って電気を着けたりした。
「器用、ですね」
「まあな」
得意気に尻尾を揺らし、リョウツゥをソファーの所につれていく。
いろんな物が散乱したジルの部屋は、ソファーの上にも荷物が散乱しており、ジルはその荷物達を尻尾でザーッと一気に下に落としてリョウツゥを座らせた。
「お茶お茶」
様々な荷物を跨ぎながら台所に消えたジルを見送ったリョウツゥは、部屋の中を見渡す。
電気を着けていても薄暗く、散乱している荷物もリョウツゥには良く分からない物が多かった。
ただ、血がついたままの包帯がゴミ箱から溢れんばかりに突っ込まれていて、それを見たリョウツゥは口をキュッと結ぶ。
「甘いの好きか?ココアあるけど?」
「あ、はい。好き、です」
「……ぉう……」
まるでジルが好きだ、と言われたみたいでジルは勝手に照れてココアをいれる。
大きく揺れる尻尾を手で押さえ、カップをリョウツゥに渡した。
「ぁりがとう、ございます」
カップを受け取ったリョウツゥは、温かいそれにホッと息を吐いた。
自分では気づかなかったが、大分冷えていたようだ。