投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

貧乳コンプレックス
【青春 恋愛小説】

貧乳コンプレックスの最初へ 貧乳コンプレックス 3 貧乳コンプレックス 5 貧乳コンプレックスの最後へ

貧乳コンプレックス-4

プールの中に入り、宮崎さんと共に構えた。
ピーッ!
ホイッスルが響き、わたしは水の中へ身体を躍らせる。
(……変だな、久しぶりからかな。泳ぎにくい)
思うように身体が進まない。
(でも、此処で悪いタイム出したら絶対あいつに何か言われ……)
「ッ!?」
考え事をしていたからだろうか、それとも妙な緊張があったからだろうか。
突然ふくらはぎに走る鋭い痛み――足を攣ってしまったのだ。
反射的に身を屈めようとしてしまい、わたしは沈んで大量の水を飲んでしまう。
苦しくて、何とか水中から抜け出そうと顔を上げるも、水面に顔を出すに至らず。
(ヤバイ……!)
そう思っているうちに意識が薄れて行く。
そんな、水泳の授業で溺死なんて洒落にならないよ。誰でも良いから、本当、助けて……!
薄れて行く意識の中、わたしはそんなことを思った。


気が付けば、保健室だった。
保健の先生に聞いたところ、暫く休んでいなさいとのこと。
いつの間にか体育着に着替えてあるけれど、これは自分で着たらしい。
うーん、記憶がない。
でも、とにかく助かって良かった。
保健室のベッドの上、わたしは枕に頭を沈めながらそう思った。

プールで疲れているからだろうか、ベッドの中でわたしは心地良くまどろんでいた。
校庭では他学年がソフトボールをしているようだが、まどろみの中、彼らの声が遠くに聞こえる。
キーンコーン……
チャイムの音も遠い。廊下がにわかに騒がしくなり、休み時間になったことを否が応にも感じてしまう。
ひどくだるいけれど、教室に戻らなければ。週で唯一の6限が待っている。
そんなことを考えつつもうつらうつらしていると、保健室のドアが開く音がした。
「茜?」
舞子の声だった。
保健の先生が入って来なさい、と舞子に言う。
彼女はおずおずと入って来て、わたしの状態をうかがった。
「田島先生が此処まで運んで来てくれたんだよ。気分、どう?」
「ん……大分良い」
寝たまま、わたしは答えた。
だるさはあるが、起きても差し支えはないくらいだ。
舞子は安堵したように笑みを浮かべた。
「良かったぁ」
「迷惑かけて、ごめんね。しっかし、我ながら恥ずかしいな……高校生にもなって、溺れるなんて」
その言葉に舞子はふわりと笑う。つられてわたしも笑った。
それから暫し歓談していると、予鈴が鳴った。
「あ、そろそろ戻らなきゃ。茜、どうする? もう少し寝てる?」
わたしは少し考えて、頷いた。
「うん、寝てる。悪いけど、先生に言っておいてくれないかな?」
だるいのと、溺れてしまったためクラスの皆に会うのが何となく気恥ずかしいのとで、6限はサボることにした。
舞子はわたしの言葉に頷いて、教室に戻るべく踵を返す。
しかし、ふとまたわたしの方に身体を向けて、わたしの耳元に顔を寄せた。
何?と疑問符を浮かべるわたしに、舞子は言う。

「本当はさ、保住君が真っ先に飛び込んで、茜をプールサイドに上げたんだよ。彼、そのまま抱き上げようとしてたんだけど、女の子の身体に触るのは駄目だって田島先生が止めてさ」
「な……ッ!?」
一気に、わたしは顔が赤くなったのを感じる。
動揺が収まらないうちに、舞子は笑いながら、じゃあねと軽く手を振って去って行った。
ちょ、ちょっと待ってよ。
何、それ。
保住がわたしを助けてくれたって?
かーっと熱が上る。きっと今は耳まで赤い。


貧乳コンプレックスの最初へ 貧乳コンプレックス 3 貧乳コンプレックス 5 貧乳コンプレックスの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前