い-6
それから3日後。
私はフランス行きの飛行機に乗っていた。
もう。ここ数日官能小説も読む気力がないほどに良く働いた。
あれは私の元気の源なのに。
それでも数ページ開いたところで
こんなものを読むよりも
王子の手の方がどんなにエロチックなものか
思い出さずにはいられない。
文章で読むだけの感覚より
実際に肌にふれたあの舌の感覚がわたしを惑わせる。
たった2回の夜を過ごした相手を
何日も何日も思い出して、私の中は王子でいっぱいになった。
今までまったく知らなかった王子の存在が
わたしの生活のすべてを占めた。
大好き。
そう心から思えるようになって
自分のその気持ちに嬉しくなる。
空港に降り立って、慣れた手順でフランス支社に向かう。
支社のドアを開けると
もう何年も月の半分を過ごしている面々が驚いた。
その中に王子が驚いてこちらを見ている。
「すみれさん・・・?」