おそとでエッチ-5
「……あのさあ、ここまでする必要ある? 心配なのはわかるけど」
「嫌ならユウはさっさと帰ればいいじゃない。こっちはあんな男を紹介しちゃった責任ってモノがあるんだから」
公園のまわりをぐるりと囲む、背の高い植え込みの陰。
桃子は木々の隙間に隠れ、数メートル先のベンチで肩を寄せ合う奈美と美山の様子をうかがっていた。
別行動とは言ってみたものの、いまいち美山のことが信じきれない。
だけど、奈美に好きな男とふたりきりで過ごす時間を楽しんでほしい気持ちもある。
そこで。
こうして少し離れた場所から見守りながら、もしも美山が奈美に襲いかかるようなことがあれば止めに入ろうという作戦をとってみた。
それもこれも、友人の身の安全を思えばこそである。
なのに、すぐ後ろにいるユウはあきれ顔でブツブツと文句ばかり言う。
「……悪趣味だって、こんなの。デートしてるところ覗かれたりしたら、気分悪いと思うけどなあ」
「じゃあ、ユウは奈美が物陰に引きずり込まれてガンガンやられちゃってもいいと思ってんの? あの子、まだ処女なのに。信じられない」
「いや、そんな極端な……でもほら、見て。今日の美山さん、全然そういう危ない感じじゃないよ」
たしかに。
ここに来てから1時間。
美山は優しい笑顔で奈美を見つめながら、心から会話を楽しんでいるように見えた。
ここからでは、何を話しているのかまではわからない。
でもファミレスにいたときから続く、初々しく幸せそうな雰囲気はそのままだった。
ときおり美山が顔を近づけようとすると、奈美は赤面して顔を両手で覆ってしまう。
ちょん、とおでこをくっつけられただけでもキャアキャアと大騒ぎ。
美山のほうもその反応を面白がっているだけなのか、無理にそれ以上のことをする様子はなかった。
ほほえましいのを通り越して、じれったくなってくる。
……もう! キスまではOKだって言ってるんだから、さっさとやっちゃえばいいのに。
ギュッと後ろからユウが抱きついてきながら、小さくため息をついた。
「桃子も初めて誰かとキスする前って、あんな感じだった?」
「え? どうだったかな。あんまり……覚えてない」
少し声が震えた。
初めてのキス。
覚えてないわけじゃない。
思い出したくないだけだ。
あの池のほとりの草むらで。
兄に口をこじ開けられ、舌を捻じ込まれた。
べちゃべちゃとした感触が嫌で。
醜悪な思い出。
いけない、考えちゃいけない。
溢れだしそうになる記憶に無理やり蓋をする。
「なんでそんなこと言い出すの? どうでもいいじゃない」
「いや、いいんだけど……僕は全部、桃子が初めてだったから。キスも、その他のことも」
「なに、こんな女が相手で後悔してる?」
「そんなわけないだろ、ただ……桃子の初めての相手になりたかったなって」
何か冗談を返したいと思うのに、不覚にも泣いてしまいそうになった。
慌てて話題を変える。