笛の音 3.-38
身を起こして、拘束された有紗の腰をしっかりと掴み、壊れはすまいかという心配を微塵もしていない打突を送り込んできた。
「お前はなっ! 愛美の前で、『いいお姉ちゃんでいたい』……だけなんだっ! そうだろっ!? 本当はオマンコをおちんちんでこうしてもらって、気持ちよくなりたいだけなんだよぉおっ!」
大声で言い放った信也の言葉に、有紗は敗北のるつぼに転げ落ちる寸前に縁に手をかけた。
「ちがうっ……!!」
急に強く大きな声で涙に暮れる瞳の中に恨みを燃え上がらせて睨んだ有紗に、傍で二人の性交を鑑賞していた瑠依子が目を見開いて怯んだ。
「何いってるんだっ……、わかるだろ? 有紗。森と有紗が会ってる時にどれだけお父さんが辛い思いをしたか。……さっきお父さんが別の女とセックスしてるのを見て、お前も辛かったろ? ん?」
何を馬鹿な――。
だが、有紗は思い当たる。瑠依子と信也が交わっているのを見た時ではない。有紗を横浜へ向かわせた原動。明彦と会うことで逃れようとした鬱屈。信也が明彦と有紗が電話の向こうで密戯を繰り広げられているのを聞いている時に抱いた感情と同じではないのか。
「嫉妬したろ? 有紗。な? そうなんだろ?」
信也が言うと、頑なに否定しようとしていた感情がジュッと胸に灼きついた。そうだ、自分は、こんなことまでして守ろうとした妹に、自分でも制御できなくなるほどの嫉妬を感じていたのだ。
信也が膝に括られているロープの戒めを解き、男茎を埋めたまま有紗を抱き上げた。深く突き刺さってくる男茎に窮屈で無様な格好ままベッドへ運ばれる。
仰向けに寝転がった信也は有紗を体の上に乗せると、
「瑠依子、お前も有紗に挿れてやってくれ」
と命じた。はぁ? という顔をした瑠依子だったが、「ボストンの中に、あったろ?」
信也にそう言われて合点がいった。楽しげな顔でボストンを探ると、双頭のディルドが仕込まれたペニスバンドを取り出す。
「信ちゃんのエッチ見てたら、私もしたくてしょうがなかったんだぁ……」
瑠依子は、んっ、と悩ましい声を漏らして、十分潤っている膣内に内側の頭を埋めると、褌の要領でベルトを自らの下腹にしっかりと巻きつけた。下腹部から生いた外側のディルドを握ってベッドに上がってくる。
「……てか、私もってぇ、……もしかして、アナル?」
手を拘束され、信也に突っ伏すように男茎を埋められている有紗の後ろ姿を見て、瑠璃子が問うた。
「そうだ……。有紗はアナルも俺で経験済みだ。……浣腸で洗わなくても、お前のソレなら大丈夫だろ」
「う、や……、やめてっ……、あうっ!」
背を丸めて逃れようとする有紗に、真下から強い打突が与えられる。反らされた背のせいで更に菊口が瑠依子に差し出された。
「……こんなのでホジったら、きったないの、出てきそぉ……。でもいっかぁ。有紗ちゃんみたいなキレイな子がさぁ? きったないの見せちゃうのも、面白いしっ」
そう言って張型の先端を当てがってきた。媚薬を塗られた菊口はもう緩んでいた。だが擬似性交も肛交も経験がない瑠依子は、たどたどしく亀頭で菊門を広げると、
「よいっしょっ……」
何の配慮もなく一気に直腸まで差し入れた。
「ぎゃぁっ!」
断末魔のような叫びを上げた有紗だったが、これまで信也に姦されてきた時は、当然物理的に一つの男茎だったのに、同時に二本を身体に埋められた感覚に、媚薬で邪淫に染められた体はむしろ苦しみの悦びを示していた。
(直樹……、直樹っ、助けて……)
霞む。靄の向こうから走って来て抱きしめて欲しい。今すぐに。まさか今、愛する自分が前後を姦されている時に、直樹は他の女と一緒にいるのだろうか。
フルートが吹かれたのかもしれない。信也と瑠依子の愚劣な嬌声のせいでよく聴こえなかった。