寂しさの行方-5
いつしか私の息は呼吸過多のように荒くなっていて、顔も赤く上気していた。
口から離れた神村の舌が首筋から鎖骨を経て乳首に到達した。私は大きく身体を仰け反らせた。そしてその唇が私の乳首を咥え込み、温かな舌が何度もその粒を転がした。
私は思わず手を神村の下着に伸ばし、焦ったようにウェストゴムに指を掛けた。神村は何も言わずその手をどかすと、膝立ちになって自らその最後の一枚を脱ぎ捨てた。
私も焦ったように身体を起こして自分のショーツを脱ぎ去り彼と同じ姿で向き合った。
神村は私の身体をぎゅっと抱いて再びベッドに横たえた。
「いい? シヅ子ちゃん」
私は黙って頷いた。
神村はゆっくりと私の両脚を広げ、熱を持ち大きく屹立したものを豊かに潤った谷間に宛がった。
ああ、と私は喘ぎ、目を固く閉じた。
「いくよ」
神村はそう言って、ゆっくりと身体を傾け、私に体重を掛けた。
閉じられていた秘部が押し広げられ、熱く脈動しているそれは私の体内にゆっくりと入り始めた。
ぞくぞくとした震えが全身を駆け巡り、私は瞳を潤ませて息を殺していた。うっすらと目を開けると、神村の顔もいつしか赤く上気していた。
「好きだ、シヅ子ちゃん」
神村はそう小さく叫んで腰を動かし始めた。
「ああ……、わたしも」
その汗に濡れた大きな背中に腕を回して、私も身体を波打たせ始めた。
――恋人がいるにも関わらず、妻子ある男性と身体を重ね合っている。
その時私はその許されざる行為の現実を思い、なぜかますます身体を熱くしていた。愛する男性とは違う人が自分の中にいる。そしてその人といっしょに熱くなっていく……。それが道ならぬ行為だということは頭では判っていたが、燃えるような身体の熱さがその理性をとうに吹き飛ばしていた。
「神村さん!」
私は叫んだ。すでに身体は最高に熱を帯び、炎を上げて激しく燃え上がるかと思うほどだった。
「シヅ子ちゃん! 好きだ、君が好きだっ!」
神村も叫んだ。腰の動きがさらに大きくなり、私は自分の身体の中で暴れる硬く、しかしひどくなめらかなものをずっと身体の奥深くにつなぎ止めておきたいと強く思っていた。神村の体温、荒い息づかい、擦れ合う肌の感触、そして身体を揺する度に漏れる小さなうめき声にさえ、私はすっかり心奪われていた。
「ああ……も、もうダメ……わたし、わたしっ!」
自分の中でめまぐるしく渦巻く興奮に、私はもうどうなってもいい、と思っていた。この身体の全てを、この男性に征服して欲しい、そう思っていた。
不意に両目から涙が溢れ始めた。そして一瞬恋人アルバートの顔が目に浮かんだ。しかし次の瞬間、いきなりそれはかき消え、視界が真っ白になり、私は全身をぶるぶると痙攣させ始めた。「あああーっ!」
「シヅ子ちゃん! イ、イくっ! 出るっ!」
神村も叫び、身体を硬直させた。
「来て! 神村さん、お願い!」
私は思わずそう叫んでいた。
私の最も敏感で熱を持っていた場所に激しく抜き差しされていたものが動きを止め、びくびくっ、と脈動し、ぐぐっと膨張したかに思えた。そして次の瞬間、神村の熱く沸騰した思いが、その体内から私の身体の奥深くに噴出し始めた。
どくっ! どくどくっ!
うううっ! と呻き、細かく身体を震わせながら神村は全身汗にまみれ、目を固く閉じ、苦しそうな表情で歯を食いしばっていた。
「あああーっ! 神村さん!」
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