裏切りと凌辱の夜-4
「桃子、おまえ本当に」
「そんな人、本当のこというわけないじゃない! 良也くん、わたしのこと信じてくれないの!?」
良也が何か言おうとしたのを、香苗がもの凄い大声で遮る。
本当のことって何だろう。
信じるってどういうこと?
聞きたいことはたくさんあるのに、何から言えばいいのかわからなくなる。
香苗がぽろぽろと涙を流しながら、良也の腕を揺さぶる。
「仕返ししてくれるってい言ったでしょう? ねえ、お願い。はやくその女を縛って、先輩たちを連れてきて」
「で、でも、そんな」
「約束したじゃない、わたしと同じ目に遭わせてくれるんでしょう? だからわたし、良也くんにあんなことまでさせてあげたのに」
「か、香苗」
泣きながら抱きついてくる女を振り払えるほどの冷たさを、良也は持ち合わせていない。
外見やイメージだけで言えば、桃子よりも香苗の方がずっと弱々しく見える。
いつでも弱いものを守りたがる。
彼はそういう男だ。
何かを振り切るように、良也は脱ぎすててあったジーンズをはきなおし、部屋の隅に置いてあった梱包用のビニール紐を手に取った。
「……お、おまえが悪いんだからな、桃子」
おまえが悪い。
そう言われながら、手首や足首にぐるぐると紐を巻きつけられている間も、桃子はいったい何のことを言われているのかまったくわからないまま呆然としていた。
良也がどこかに電話を入れ、アパートの階段を駆け下りていく。
それを確かめた後、香苗は素早く下着やワンピースを身につけながら聞いたこともない嫌な声で笑い出した。