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飛べない鳥の飛ばし方
【ファンタジー 官能小説】

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夜の蜘蛛-4


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 気がつくと真っ暗な部屋の中に居たが、暗闇でも見えるジルにとって大した事ではなかった。
 枕元には薬の入った瓶と手紙が置いてある。
 手紙を広げると綺麗に並んだ無機質な字でこれからの指令が書いてあった。
 瓶の中身は発作を抑える薬が入っている。
 今のジルにとっては生きる為に必要な薬だった。
 市場に出回る事が無いその薬は裏社会が握っている。
 手に入れる為には大金を払うか、裏社会で生きるかどちらかしかなかった。
 ジルはクアトリアから離れた町で生まれ、捨てられた孤児だ。
 盗みなどで何とか食い繋いでいたが、突然発作が起きた。
 町民に襲いかかったが町民達も慣れたもので当然のように捕らえられ、半殺しにされて簀巻き状態で川に捨てられた。
 その時、拾われたのがあの女性の居る組織だった。
 名前さえ知らないあの女性は通称「スパイディ」。
 蜘蛛の様に糸を張ってジルのような民を捕らえ、がんじがらめにして手足の様に操る女。
 張り巡らせた糸は緻密に計算されており、無駄な糸は1本も無いという話だ。
 スパイディはそうやて人員を集め、あらゆる仕事を請け負っていた。
 スリ紛いの小さな仕事から殺しまで、特に内容は選ばない。
 スパイディの気分次第で請けるので、本当に内容は様々だった。
 今回の指令書には「引き続きクアトリアのカウル=レウム王の偵察」と「ゴーグルの改良」だった。
 ジルがいつも身につけているゴーグルは、銀の地域で開発されたもので様々な情報が入っている。
 地下資源が豊富な銀の地域では昔から機械類の開発が盛んに行われており、銀の民も機械の扱いが上手い。
 ジルも手先が器用で機械弄りが得意だ。
 今回の「改良」とは銀の民以外でも簡単に扱えるようにと、ナビゲーションシステムの向上。
 将来的には組織全員にチップでも埋めて、スパイディの目から逃れられないようにしたいのだろう。

「……おっそろしぃ女……」

 今でも充分逃げられないというのに、まだがんじがらめにしたいらしい。
 どの地域に属しているのか良く分からないスパイディは、はっきり言って頭がおかしい。
 狂っていると言っても過言ではない。



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