愛のあるフェラチオ-7
他の学生が就職活動であたふたしている真っ最中、桃子は何もそれらしきことをしていない。
卒業して行き先がなければ、そこで死んじゃってもいいかな。
そのくらいに思っていた。
それを聞いて、奈美が素っ頓狂な声をあげる。
「ええっ、そうなの? あんな面倒くさい思いして教員免許取ったのに」
「あんなの単位さえ落とさなきゃ誰だって取れるでしょ。私立文学部で取れる資格らしいモノって、他に思いつかなかったもん」
「なんだ、桃子はてっきり先生になるんだと思ってたのにな。それでほら、男子校とかに配属されてAV顔負けみたいな日々を送るわけ」
「なるほど、何十人もの生徒を毎日とっかえひっかえ相手にしちゃって?」
「そうそう、男性教師も入り乱れてものすごいことになったりして」
くだらない妄想に、ふたりして手を叩いてゲラゲラ笑った。
「そういえば奈美も就活なんかしてなかってよね。卒業したらどうすんの?」
「え? わたしは……帰るよ、地元に」
しゅーっと風船がしぼむように、声に元気がなくなっていく。
あまり見たことのない、奈美の陰のある表情。
隣にいる桃子まで、なんだか不安になってくる。
「ちょ、ちょっと、なんでそんな顔するのよ。帰るのが嫌なの?」
「嫌ってわけじゃないけど……」
卒業したらすぐ、結婚するんだ。
奈美はぽつりとそう言った。
「へえ、それもいいじゃない。でも、いつのまにそんな相手つくったの?」
彼女に恋人がいたという話は一度も耳にしたことが無い。
奈美のさばさばした雰囲気から、なんとなくいまは恋愛に興味が無いのだと思っていた。
「つくったってわけじゃないよ。親同士が勝手に決めただけ」
「なにそれ、何時代の話? すっごく嫌そうな顔しちゃって。嫌なら結婚なんてやめればいいのに」
「……あのねえ、誰もがあんたみたいに自由に生きられるわけじゃないんだからね。わたしがこの話を断ったりしたら、親も親戚も生きていけなくなっちゃうの」
奈美が生まれ育ったのはまだ古くからの因習が残る、小さな農村なのだそうだ。
村で生まれた娘は、必ず村の男と結ばれなければならない。
いつでも選ぶのは男の側で、女は選ばれるのを待つだけ。
そのしきたりを破れば、一族もろとも村を追い出されてしまうらしい。
そんな村なんてこっちから出てやればいいのにと思うけれど、問題はそんなに簡単なものではないという。
「なんだかんだ言っても、あの村のことは嫌いじゃないし。たとえ処女のまま40いくつのオジサンのところに嫁がされるのがわかっててもね」