〈伸びた触手〉-2
「おはようございます」
道路の両側に立っている“作業員達”に、玲奈は恥ずかしそうに挨拶すると、キュッと唇を噛んでペダルを強く踏み締めた。
多少なりとも視線を浴びた事に、気恥ずかしさを感じたのだろう。
『ヒヒッ!綺麗な顔してんなあ。アレが今に虐められて、グチャグチャになるんだからなあ』
『声も可愛かったよな?やっぱ子猫みてえな悲鳴をあげんのかな?それとも豚みてえな汚え声出すのかなあ?』
『クンクン!ボディーソープのイイ匂いが残ってるぜ……まあ、夕方にゃ汗に蒸れて、脇もオマ〇コも臭くなってんだろうがな』
映像だけでは分からない玲奈の容姿を皆で確認する為に、朝早くから行動したのだ。
その評価は満足のいくものであったのは、皆の言葉や表情からも明らかである。
『もしかしたらシスターに会えるかも知んねえから、俺らは教会に行ってくる。お前らは狩り場を探してから、後で来い』
部下に自分の行動を電話で伝えると、セダンはあの教会に向かって駆けていった。
玲奈の自宅から数分と掛からずに、男は教会の入り口となる細い道に辿り着いた。
『ちょっと待ってろ』
眼鏡の男は一人で降りると、煉瓦畳の道を歩いて教会の扉を開け、中へと入っていった。
『…………』
陽が昇っているにも関わらず、教会の中は決して明るいとは言えない。
ステンドグラス越しの仄かな明かりか、柔らかく差し込むのみだ。
その色付いたような光のカーテンの中に、何やら人影のようなものが佇んでいる……男は逸る心を圧し殺しながら、歩みを進めた……。
「あら……おはようございます。朝のお祈りですか?感心ですわ……」
『ッ!!!』
この偶然を運命と呼ぶのならば、あまりにも残酷と言わざるをえない。
男の前に立っている女性こそ、昨夜の映像の中で見たシスターその人なのだから。
なんとなく、行けば居るかもしれないという安易な探りは、ものの見事に的中となった。