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忘れられない時間
【レイプ 官能小説】

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『痴漢ごっこ』の記憶-3

 美山と初めて会った日。
 夏の暑い日だった。
 ファミレスの前で待ち合わせた。
 赤い車。
 お洒落なスーツ姿の男。
 明るく話し上手で印象は悪くなかったが、目の下のクマがひどく少しやつれているように見えた。
 危ない人かもしれないな、という予感は最初からあった。
 それでも、桃子は車に乗った。
 別に失うものなど何もない。
 何かされるのなら、中途半端にレイプなんかで終わらせないできちんと殺して欲しい。
 ぼんやりとそれだけを思いながら。

 車はすぐ近くのインターから高速道路に入り、そのまましばらく走り続けた。
 頭が痛くなるような音量で音楽を流しながら。
 アクセルが踏みこまれる。
法定速度をとっくにオーバーしたスピード。
 怖い? と何度か聞かれた。
 別に、と答えた。
 好きにすればいいとしか思わなかった。
 このまま事故でぐちゃぐちゃになって終わるのもいいかもしれない。
 ただの肉片になった自分の姿を思い描く。
 なんだか、笑えた。
 そのとき、他に何の話をしていたのか記憶にない。
 ただよく晴れていて、空の色が嫌みなほど鮮やかな青色だったのをよく覚えている。
 東京を離れ、山梨に入った。
 高速道路を下りて曲がりくねった峠道を走る。
 その間もスピードは変わらない。
 この人も死にたいのかな、と思った。
 でも、それだけだった。

 たどり着いたのは、昼間でも薄暗く肌寒い山の中。
 背の高い細い木が、何十、何百と植わっていて視界を遮っている。
 舗装されたメインの道から大きく外れた、うらさびしい廃道。
 昔はどこかに通じていたのだろうが、そのときはすでに道の先が土砂で埋まってしまっていた。
 美山が車を止めてドアの外に出る。
 湿った土とむせかえるような緑の匂い。
 ぼんやりしているうちに助手席側のドアが開けられ、桃子は車中から外へと引きずり出された。

「さあ、こっちにおいで」
 優しい口調とは反対に腕が抜けるかと思うほど乱暴にひっぱられ、土の上に押し倒された。
 尖った草の先がサンダルを履いただけの足にチクチクと刺さる。
 背中に当たる砂利が痛い。
泥に汚れたワンピースの胸元がビリビリと引き裂かれる。
興奮した様子の美山が、銀色に光るものを桃子の頬にぴたぴたと当てた。
 サバイバルナイフ。
 いくら覚悟をしていても、いざ刃物が体に触れると身がすくんでしまう。
「な、何よ、いきなり……」
 そう言い返すのが精いっぱいだった。
 美山は嫌な笑いを顔いっぱいに浮かべて、血走った眼で桃子を見下ろした。
「桃子ちゃん、僕と遊んでくれるって言ったよね? 痴漢ごっこをしようよ、面白そうだろう?」
「痴漢ごっこ……?」
 そう、これは遊びなんだ。
 桃子ちゃんはまだ処女で、学校の帰り道に悪い人に捕まっちゃったんだよ。
 可哀そうにね。
 いまから君は僕にいやらしいことをされちゃうんだ。
 舐められたり、突っ込まれたりするんだよ。
 最初は嫌がって暴れて、泣き叫ぶ。
でも桃子ちゃんは将来あんなくだらないサイトで遊ぶようなヤリマンになっちゃう子だから、途中できっと気持ちよくなってくる。
 最後は自分から僕のチンポにむしゃぶりついてきて、お願いだから中に出してって言いながら喘ぐんだ。
 うまく出来たら、家に帰してやる。
 出来なかったら、どうなるかわかるよね?
 美山はそう言って、桃子の胸を覆うブラジャーの真ん中にナイフの先を当てた。


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