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忘れられない時間
【レイプ 官能小説】

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虐め抜かれる快楽-6

 まだ桃子が子供の頃の話だ。
 年の離れた兄がいた。
 なにをさせても優秀で、両親の自慢の息子だった。
 勉強の傍ら、よく桃子とも遊んでくれた。
 近所の池や川で魚釣りを教えてくれたりしたのを覚えている。
 でも、ある日を境に妙なことをしてくるようになった。
 誰もいない山の中や草むらで、桃子の洋服を脱がせてべたべたと素肌に触れてくる。
 手で、兄の股間を撫でさせられたりもした。
 そうすると兄は喜んでお菓子をくれた。
 下着を脱がされ、まだつるりとした秘部に指を捻じ込まれたこともある。
 痛くて、痛くて。
 そうされながら桃子がお漏らしをしてしまうと、また兄は喜んだ。
 次第に行為はエスカレートし、兄の勃起した男性器を口の中で舐めさせられるようになった。
 苦しくて嫌だと泣くと、見えないところを何度も叩かれた。
 仕方なく、舌をつかって一生懸命になめた。
 苦くて気持ちの悪いものが、いつも喉の奥に流し込まれる。
 飲まないと許してもらえなかった。
 両親は知っていた。
 けれども、見て見ぬふりをした。
 咎めると、兄の機嫌が悪くなるからだ。
 桃子は兄ほど優秀ではない。
 いっそ、兄のオモチャになっていればいいとでも思ったのかもしれない。
何年か過ぎたある春の日、とうとう兄は桃子と最後の一線を越えようとしてきた。
 もう、我慢できなかった。
 池の周りを這うようにして、逃げて、逃げて。
 追い詰められたと思った瞬間、兄がずるりと足を滑らせて池に落ちた。
 みるみるうちに泥が兄を飲みこんでいく。
 助けてくれ、誰か人を呼んで来てくれ、と懇願された。
 耳を塞いだ。
 まわりには誰もいない。
 洋服に着いた汚れを払って、そのまま家に帰った。
 兄の行方をきかれたが、知らないと答えた。
 翌々日になって、池に浮いている兄を近所の人間が見つけた。
 知らない、知らない。
 桃子はそう言い続けたが、両親はなんとなく事情を察していた。
 なにか罰を受けたりすることはなかったが、ことあるごとに酔った両親から「人殺し」と責められるようになった。
 高校を卒業して、家を出るその日まで。
 いったいあのとき、どうするのが正解だったのかいまでもわからない。
 ただ、自分の手が兄の血で汚れているのは間違いない。
 忘れようとしても忘れられない罪の記憶。
 
 坂崎と出会った最初の夜に、君はもしかして人を殺したことがあるのではないかと聞かれた。
 さらりと、冗談交じりに。
 否定しなかった。
 逆に、どうしてわかったのかと素直に驚いた。
 坂崎はうろたえることもなく、淡々と答えた。
「僕も君と同じ人殺しだからわかるんだ」と。

 坂崎は若いころに一度結婚し、二年も経たないうちに離婚したそうだ。
 優しくて美しくて、自慢の妻。
 坂崎が初めて愛した女性。
 彼女が孕んだのは、別の男の子供だった。
 あるとき、妻が友人と電話しているのを偶然耳にした。
 子供は夫の子ではない、昔から付き合っている不倫相手の子供だと。
 不倫相手はいい加減な男だが、坂崎には経済力がある。
 これからも適当に遊びながら坂崎に養ってもらうのだと自慢げに話す妻。
 許せなかった。
 すぐさまあらゆる手を遣って証拠を集め、離婚した後も徹底的に妻だった女を追い詰めた。
 社会的にも、経済的にも。
 結果、彼女の両親も彼女自身も自殺に追い込まれ、残された子供は施設に入ることになった。
 直接手を下したわけではないにせよ、自分が殺したようなものだと坂崎は寂しげに笑った。

 それ以来、坂崎は女を痛めつけるために遊び狂った。
 一晩中、女が悲鳴をあげ傷だらけになるまで責め立てる。
 たいていは一度ベッドを共にすると二度と会いたくないと言うらしいが、桃子だけは違った。
 責められることで、罰を受けているような気持ちを味わえる。
 贖罪のつもりなのか、自分でもわからない。 
 他の男にいくら荒々しく抱かれてもその心境にはなれない。
 なぜか、坂崎が相手でないとだめなのだ。
 桃子が「ごめんなさい」と口にするとき、頭の隅に兄の顔がある。
 きっと坂崎が「悪い子だ」と言うときも、妻の顔が彼の中にあるのだろうと思う。
 
 こんな犯罪まがいの過去を抱え歪んだ性癖を持った自分が、ユウといつまでも付き合っていていいわけがない。
 桃子の現在の悩みの本質はそこにあった。


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