浴室での愛撫-8
「だ、だって、ユウはもっと……賢くて良い彼女と一緒にいて欲しい……そうなるべきだと思うもん……そしたら、わたし捨てられちゃうじゃない」
流れ落ちる涙が、高まっていく快感のせいなのか感情からくるものなのか判別がつかない。
全身を震わせてしゃくりあげる。
言いたくなかった。
こんなの、かっこ悪い。
ユウはまだ舌の動きを休めない。
「桃子を捨てたりなんか、僕は」
「絶対そうなるの、わかってるの! でも、ひとりじゃ耐えられない、そんなに、わたし強くない……ユウのこと笑って見送ってあげられる自信ない!」
せめて、何かでごまかしていなくちゃ。
これ以上、本気になっちゃいけない。
そんな気持ちが常に心のどこかにある。
「なんでそんなふうに言うんだよ。僕、気にしないようにするから。いままで桃子が何人の男と遊んできてたとしても」
「……なんにもわかってない。ユウは、ほんと何にも、あ、あぁっ……!」
凄まじい愉悦が桃子の中心を貫いていく。
ほとんど無理やりのように与えられる絶頂感。
タイルの床に倒れ込みそうになったところを、腕の中に抱きとめられた。
大丈夫だよ。
ずっと大切にするから。
的外れな言葉が耳をすりぬけていく。
すべてを打ち明けて甘えてしまいたい気持ちと、もういっそこのまま離れてしまいたい衝動がせめぎあう。
桃子にはまだ、ユウにも美山にも、他の友人たちにも知られていない秘密がある。
それをいま生きている人間の中で知っているのは、坂崎だけだった。
(つづく)