〈蠢動〉-3
『武野……間違いねえな』
男は門に張られている表札を見て、この家があの少女の家であると確信した。
車は住宅地の空き地に止まると、その家から現れるであろう少女を待った。
『……来たッ!』
数分も経たぬうちに、少女は自転車に跨がって姿を現した。
ツインテールはバッサリと切られ、肩に掛からぬくらいのショートカットになっている。
更には卒業アルバムの純朴さは鳴りを潜め、清楚としか表現出来ないくらいに美しく成長を遂げていた。
白いYシャツに赤いネクタイを締め、襟首に黒のラインの入った白いベストを着込み、その上には紺色のジャケットを纏っていた。
白と青と深緑のチェック柄のスカートは、膝よりやや上の長さで、魅力的な脚を控えめにも見せつける。
期待以上の美貌を誇る美少女は、アイドルのグラビアを切り取ったかのように、その景色までも一変させていた。
『卒アルと全然違うじゃねえかよぉ……美味そうに育ちやがって……ククク……』
『アレなら高く売れるぜぇ……もう他の女を探す必要は無えなあ……』
助手席の男は後部席からカメラを取り出すと、気付かれぬようにウインドウにレンズを押し付けて被写体に向け、撮影を始めた。
『くそぉ……なかなか正面から撮れねえなあ』
『焦んなよぉ。とりあえず、何処の高校に通ってるか付けるぜ』
車はユルユルと進み、まさか自分を付け狙う者達が居るとも知らず、スカートをはためかせてペダルを漕ぐ美少女の後を追う。
黒髪はサラサラと風に靡き、綺麗な顎のラインは男達を魅了して止まない。
勿論、助手席の男は美少女の後ろ姿を撮り続けている。
『今にあの細い括れを掴まれて、バックからガンガンに突かれんだろうなあ?』
『どうにかして俺達も混ぜて貰いてえよなあ?ヘッヘッへェ』
住宅地を抜け、さっき男達が通ってきた道を逆走していき……そして、この街に唯一の女子高の門をくぐって視界から消えた。
『ここに通ってんのか……夕方まで出て来ねえだろうし、ちょっとブラブラするか?』
車は女子高の前を通り抜け、再び街の中へと戻っていった。
きっと夕方には此処に舞い戻り、完全にターゲットとされた美少女の行動を探るはずだ……。