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笛の音
【父娘相姦 官能小説】

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笛の音 2.-30

 直樹が手を上げる。来る、と思ったが、差し上げられたのは両手で、強く肩を掴んできた。
「触んないでくれる?」
「……どうしても忘れられない、会いたくて仕方なかった、大好きな人だったから」
 顔が近い。視線が澄んでいて痛い。まだこんな目ができるのか、と有紗は直樹を見上げて、
「……今もそう?」
 と訊いた。
「今も。有紗さんが愛美のお姉ちゃんだって知らされても」
 有紗の方から半歩近づいた。体どうしが触れそうだ。
「……キスして」
 じっと瞳を見つめて言うと、直樹はすぐに唇を重ねてきた。背中がブルッと震えて、有紗は腕組みを崩して直樹の二の腕を掴んだ。妹の彼氏だと知らされても変わらない唇だった。花火の前で交わした時から、心の潤しさが変わらない。直樹が肩の手を外して腰に回し、抱き寄せてくる。体が触れる。彼の腕の中に包まれる愉楽もやはり変わらなかった。
「キスしてって言われたら、キスするんだ? 愛美がかわいそう」
 唇を少し離し、目を閉じて額を合わせたまま有紗が言った。
「だって、有紗さんに言われたから」
 そう言ってまた唇を合わせてきた。融ける。
「愛美を泣かさないで」
 唇を鳴らして何度も重ねる合間に有紗が言うと、
「……こんなことさせて、ヒドイよ」
 直樹が苦しそうに言った。だが、お互いの唇をはみあって、鼻先を突つきながらまだ続いた。
「ヒドイ女だって、七年前に言ったもん」
「有紗さんっ……」
 更に固く直樹に抱きしめられた。「愛美と、別れる。……別れたい」
「もう一回、ひっぱたかれたい?」
「……愛美とはうまくいってない」
「ウソつかないでって。愛美と一緒に住んでんだよ? あの子見てたら――」
 英会話教室でいつも二人は会っている筈だ。それに、休みにはオメカシして、ゴキゲンに出かけていく。自分が叔父の姦虐にあっていた時も、この心地よい手で妹を抱きしめていたに違いないのに。
「ウソなんかついてない」直樹は有紗の言葉を遮って、「愛美とは……、一回しかしてない」
「ちょっと、マジで言ってんの? そんなすぐ分かるウソ……」
「できないんだ。できなくなった」
 直樹は有紗を引き剥がして、至近に見つめてきた。竦んで動けないほど、真摯で、悲痛な眼差しだった。「愛美としようとしても、……その、勃たない」
「……直樹。ひっぱたくから、離して」
「本当だよ」
「なおさらだよ。……愛美がどれだけ直樹のこと好きか……、直樹とエッチしたいか知らないの? 悩んで、泣いてたんだよ?」
「だって……、しかたないよ」
 身を捩る――フリをしても直樹は有紗を掴まえて離さなかった。「できないんだ。だから、……別れたい。別れたいけど、愛美は頑張る、治るまで待つって言ってる。そんなの辛いよ、俺だって」
 男のプライドがどういう所から起こるかは、有紗には理解できないし、実感もできない。だが直樹の瞳は本当に辛そうだった。恋人が有紗の妹であると知ったことが、不能の原因であることは明らかだった。
「……もう一回キスしたい?」
 有紗は直樹を見上げた。
「……。……うん」
「勃たないのに?」
「うん」
 だが有紗は気づいていた。直樹は有紗を両手で抱きしめ、体に触れ合わせて唇を吸っている間に股間を硬くしていた。
 気づいていて有紗は黙っていた。ウソつき女だから。
 明彦に失望した日、ベンツの後部座席に現れ、薄ら笑っていた外套の男はラブホテルの駐車場に降り立つ有紗を見送っていた。信也にネチッこくまとわりつかれて部屋へ連れられていく背中に、聞こえてきたのだ――。
 お前に空いた風穴をどうやって埋めたらいいか。もう、気づいているだろ? お前だけいちいち苦しまないで、楽になっちまえばいい。
 有紗は二の腕から手を外し、彼の背中に回して身を擦りつけた。ジーンズの中で彼が脈動するのを感じる。
「……愛美を泣かさないで。直樹の方から絶対に『別れよう』なんて言わないでね?」
「だから、俺が好きなのは……」
「愛美と別れたって、私とは絶対に付き合えない。……私の彼氏のこと、愛美知ってるもん。私が今の彼氏と別れたとするじゃん? そんで、直樹にフラれたあの子の前にさ、この新しい彼氏と付き合いたいから別れたんだー、って、……直樹を紹介するの? そんなこと、絶対にできない」
「じゃ、どうすればいいんだよっ!」
 涙声の直樹が有紗の背中を狂おしく摩さぐる。直樹の手が通って行った背中に得も言われぬ心地よさが駆け抜けていった。
「直樹」
 有紗が首筋に濃厚にキスをすると、直樹の体が身震いした。「……セフレにして?」
「……」
「神田でエッチしたときも言ったじゃん? セフレでもいいんだ、私。直樹カッコいいもん。……愛美と別れないでも、それなら私と会えるし、エッチもできるよ? 私も彼氏と別れなくていいし」
「イヤだよ。有紗さん、何言ってんだよ……絶対イヤだっ」
「直樹」
 取り乱している直樹を落ち着かせるように、もう一度呼んだ。直樹がピタリと体を止める。有紗は心地よい香りがする直樹の細身をぎゅっと抱きしめた。


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