笛の音 2.-27
濁った咆哮を上げた有紗は、亀頭が進んでくるのに合わせ、両手を伸ばし獣のスタイルを取った。明彦の視界には自慢の曲線が蠱惑的に映っているだろう。
「あ、有紗ちゃんっ……!」
一往復し、次に入ってきた時にもう明彦は果てた。有紗は後ろに放たれてくる彼の精液がどれだけ真摯な愛情を滲ませていても、全て自分の不浄の器官に濁されていく、そんな妄覚に捕らわれながら、淫欲に負けた男茎が果て切るのを菊門を絞めつけて待った。明彦はすぐに巨きな茎を抜くと有紗を引き寄せ、
「ごめん……、有紗ちゃん。ありがとう……、ごめん」
と謝罪を礼を繰り返して抱きしめた。「俺のために、こんなことさせてごめん……。すごく嬉しい。……ものすごく好きだ」
有紗は彼の肩の向こうの壁を眺め、彼が謂うところの愛の証が排泄の口から流れ出ていくのを門を絞めて促していた。
うまく騙すことができた。明彦の前にヒップを差し出した時、一縷に抱いた期待を見事に裏切ってくれた。どんな優しい人も、狂おしく愛しい者を前にすれば、どんなに嫌悪に顔を顰める行為であろうが誘惑には抗えなかった。明彦は有紗のヒップをティッシュで拭い、逞しい腕で横抱きにして浴室に連れて行くと、今夜自分に差し出してくれた肢体に感動しながら、丁寧に洗ってくれた。シャワーに濡れながら何度もキスを交わそうとしてくる。まだ謝罪と礼を繰り返して。
少しでも有紗と長く居たかったのだろう、家まで送っていくと言う明彦を、あまりずっといると今日のことを思い出して恥ずかしいから、という理由で断り、新小岩の駅までに留めさせた。改札をくぐって振り返ると、有紗が見えなくまで見送っている。有紗は手を小さく振ってホームへ向かった。
だがホームへの角を曲がった所で足を止め、他の乗降客の邪魔にならぬよう端際に寄ると、壁に背を凭せて溜息をついた。暫くじっとしている。新宿方面行きの電車が来て、新たな客を吐き出して去っていく。有紗はその帰宅する人々の流れと一緒に北口へと出た。正面に伸びる道を歩いて行き、蔵前橋通り出た所でバッグの中で携帯が震えた。取り出して画面を見ると、明彦から熱情的なメッセージが届いていた。返信をしてから見上げた先に見つけたベンツに乗り込む。運転席の獣が黙ってシートベルトを付けようとする有紗の肩を掴んで抱き寄せてきた。腕を差し込んで押し戻そうとするが、低劣な情欲の力は凄まじい。
「……有紗ぁ、……有紗が他の男とセックスしてるなんて、お父さん、おかしくなりそうだったぞ」
「あんたがっ……、そう、させたくせにっ……」
森として来い。ただし、許していいのはアナルだけだ。
叔父の指示だった。簒辱している養女をどういうわけで明彦に許そうと思ったのかは分からない。だが命じた時の叔父の目色は支配者の陶酔に蕩けていた。有紗に焦がれる明彦に、肌身を合わせることは許すが、肝心な神秘の場所は許さない、そこまで意のままにできる自分に酔っていた。
そして抱かれる様を俺に聞かせろ、とも命じられた。だから有紗は明彦が抱いてくる前に携帯を取り出し、電源を切るフリをして叔父に繋いでバッグの中に忍ばせたのだ。明彦が愛を囁き、有紗に前戯を施しているところから、背面の窄まりへ男茎を埋めて一瞬で果てるまでの一部始終を電話で聞いていたせいで、有紗が戻ってくるなり運転席から迫った信也の顔は異質の昂奮が滾って醜く歪んでいた。力づくで唇を吸われる。路肩に停めたベンツの中で有紗の手を取り、スラックスの上から硬くなった男茎を握らせ、衣服の上からバストを揉み回してくる。誰かに見られてしまうことも辞さないほどの淫欲だった。
長い時間有紗の唇をしゃぶった信也は一応の満足を得たのか、やっと車を発進させた。
「……森のはどうだった? ん? オシリに挿れさせてあげた、あいつのモノは?」
嗜虐の興奮は続いており、いつもより少し運転が荒いように思える。下らない質問も投げかけてくる。有紗はシートに持たれて頬杖を付き、外を流れる景色を眺め、極めて恬淡と、
「べつに……。痛かっただけ。あんたのより、大きくて硬くて、立派だったから」
そう言い放ったが、信也は鼻息荒くニヤけると、
「でもオシリしかさせてもらえなくて悲しかったろうなぁ、森のやつ」
くくく、と、言い終わった後もまだ含み笑いが止まらない。明彦はたとえ有紗の菊門であっても、いや、だからこそ感動してくれていた。秘門を与えられなかった本当の理由も知らずに。そう思うと明彦が憐れで、自分がとてつもなく残酷なことをしたように思えてくる。それほどイイ男だった。隣で運転する男の醜悪さとは比べようもない。
「母さんには連絡しておいた。我慢できないから今すぐホテルに行くぞ。有紗もオシリだけじゃイヤだろ? ……お父さんのおちんちんで、早くオマンコをジュボジュボしてほしいだろ?」