ふたりの出会い-3
「ユウ?」
顔をのぞきこみながらポンと腕を叩いてやると、男は心底驚いたように目を見開いて慌ただしく首を上下に振った。
よく見ると、青白い唇が震えている。
おそらく「桃子?」と聞き返したいのだろうが、まったく言葉になっていない。
手も足もカクカクしてロボットみたい。
なんともぎこちないしぐさに、思わず笑いがこみあげてくる。
「ちょっと、どうしたの? まさか、本当に緊張してる?」
「……うん、ごめん。カッコ悪いのわかってるけど、緊張し過ぎて息苦しいし……は、吐きそう」
「えっ、大丈夫なの? ねえ!」
初対面の女の子を前にして、いきなり吐きそうってどこまで失礼なの。
そう茶化す隙もないほど、ユウは本当に体調が悪そうに見えた。
寄りかかっている壁がなければ、いまにも倒れてしまいそうなほどフラフラしている。
これは、笑っている場合じゃないかも。
「ごめん、ほんとカッコ悪くて……でも……気持ち悪い……」
「馬鹿、カッコとかどうでもいいよ! とりあえずどこか座ろうか? ほら、いいからつかまって」
まだ本名も知らないような相手とはいえ、こんなに具合の悪そうな人間を放置したまま帰る気にはなれなかった。
あーあ、標準点から大幅減点。
今度こそ運命のイケメンに出会えるかと思ったのに、面倒なのにひっかかっちゃったな。
桃子はユウを支えるようにして手を貸しながら、頭の中で小さくため息をついた。