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浦和ミュージックホール
【その他 官能小説】

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インタビュー ウィズ リリー-1

 「嬉しかったよ、リリーをまた見れるとは思ってなかったから」
 俺は思いがけず旧友にばったり出くわしたような気分になっていた。
 「う〜ん、そうでもないのよ、浦和ミュージックホールは育ててくれた劇場だし、みどりさんもまだいるでしょう?確かに今は別の劇場の専属なんだけどさ、呼んでくれれば出来る限り来てるから、ここ数年は2ヶ月に1回くらいはここに出てるの、新人時代のあたしを憶えてて応援してくれるお客さんもいるしね、あなたは冷たいほうよ」
 「そりゃ悪かった、でも日本中の風俗を飛び歩いてるもんだから」
 「それにしても七年ぶりはないんじゃない?あなたの前でだけ脚閉じちゃおうかと思ったもん」
 「いや、返す言葉もないよ」
 「嘘よ、また見に来てくれて嬉しいわ、お仕事だとしても」
 「ああ、仕事じゃないんだ、これはオフタイムを使ってやってる取材」
 「もう、仕事でエッチしまくってオフでもストリップ?どこまでエッチなんだか」
 「いや・・・新しい風営法が間近だろ?」
 「ああ、それ思い出したくもない・・・お手上げよね」
 「正直なところ・・・考えたくもないんだが、ストリップの行く先は暗いよね、浦和ミュージックホールだって存続できるかどうか・・・」
 「確かにそうね・・・そう思いたくはないけど、厳しいでしょうね」
 「日本中飛び歩いてね、新しい風俗も片っ端から取材したけどさ、やっぱり俺の原点はここにあるんだよ、何時か消えてしまうかもしれないストリップ、その真ん中にいるのはなんと言っても踊り子だからさ、皆がどういう想いで踊り子してるのか記録していつか本に出来たらなと思うんだ」
 「そう、そういうことならいくらでも協力する、何でも聞いて、聞きづらいなとか思わなくていいからさ」

 久しぶりのリリー、同い年とわかっているのでざっくばらん、場所もがやがやした居酒屋、ビール片手に焼き鳥や刺身、枝豆をつまみながらの取材がしっくり来る。

 「リリーはさ、高卒ですぐ踊り子になったんだろ?どういう理由で?」
 「あたしの場合は仕方なく、だったな、お金が必要だったのよ、手っ取り早くそこそこの金額が」
 「辛い話?」
 「うん、ちょっとね、でもいいよ、むしろ書いて貰いたいな」
 「聞かせてくれる?」
 「あのね、母の病気、その病院代が必要だったってことなの」
 「お母さんの・・・」
 「うん、実は母も元踊り子でさ、あたしが小学生になってからはホステスやってたんだ、あたしは幼稚園行かなかったけどさ、その頃までは楽屋で育ったみたいなもんなの」
 「その頃の思い出ってある?」
 「これといったものはないんだけど、あたしは楽屋が大好きだったな、だってきれいなお姉さん達が沢山いて代わる代わる遊んでくれるんだもん、幼稚園なんてちっとも羨ましく思ったことなかった、でもね、小学校になるとそうは行かないでしょ?義務教育だから、あたしは学校が終わると学童保育へ行って、それも夜中までってわけには行かないからアパートに帰って母が用意しておいてくれた夕ご飯食べて、膝を抱えてテレビ見て、いつの間にか寝ちゃうの、朝は母もちゃんと起きててくれたんだけど、会えるのはほんの短い間でしょう?寂しかったなぁ・・・それにね、少し大きくなると色々と雑音も入ってくるのよ、ホステスの子供、ストリッパーの子供ってね・・・あんなに大好きだった劇場の楽屋も嫌になってね・・・・勝手よね」
 「俺に言わせれば偏見だけどな」
 「今ならあたしもそう思う、でもまだ三年生とか四年生とか、そんな頃からそう言われて・・・中学ぐらいになると男の子達に好奇の目で見られてからかわれるの、『おい、ストリップはやらないのかよ』なんてね・・・もう授業が終わると逃げる様に帰ったわ、で、いつもそれを母にぶつけてた、育ててくれてる恩も忘れてね」
 「それは仕方がないよ、そこまで中学生にはわからないさ」
 「そうかもしれないけど・・・高校に上がった時はほっとしたわ、そういう事情を知ってるクラスメイトがいなくなって・・・でもその頃から母の体はちょっとづつ悪くなってたのよ、それなのにあたしったらそんなこと全然気づかないでね・・・公立だとどうしても同じ中学から何人か行くでしょ?だからわざと私立を選んだの、学費がかかるとかそんなことはちっとも考えなかった」
 「それも仕方がないよな」
 「そうかもしれないけど、あたしにとっては後悔の種なの、とうとう倒れるまで気づかなかったなんて・・・病院で母の病状聞かされて泣いちゃったわ、言われて見れば思い当たるフシたくさんあったのにって思って・・・」
 「病状、どうだったの?」
 「とにかく肝臓がぼろぼろだって、肝硬変だったの、あの病気って直るって事はないのよ、進行をなるたけ食い止めるだけ、ここまで悪くなるまで我慢してたなんて考えられない、もう少し遅かったら死んでたって・・・」
 「それから?」
 「退院はしたわ、自宅療養ってとこ、でもすっかりしぼんじゃった、水商売だからいつでも奇麗にしてたでしょ?それが一気に年取ったみたいになって・・・十年間歳取るの止めてた反動で二十年分年取ったみたいに」
 「張り詰めてたんだね」
 「でも、母はあたしが踊り子になるの反対したのよ、すぐ良くなってまた働くからって・・・
全然無理なのにね、お医者さんに無理だって言われて泣かれたの、ごめんねって・・・こっちがごめんねって言わなきゃいけなかったのに・・・二人で一晩泣いて泣いて・・・支配人さんにも来てもらってやっと認めてもらったわ」


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